9人もの立候補者が乱立した自民党の総裁選を制したのは、石破茂元幹事長だった。
各種の情勢調査などから9人のうち、石破氏と高市早苗経済安保相、小泉進次郎元環境相の3人がリードしていることが明らかで、3人のうち2人が決選投票に進むとみられていた。実際、9月27日の投開票結果は、1回目の投票で高市氏が1位で181票、石破氏が2位で154票を獲得し、決選投票に進んだ。「勝ち馬」とみられた小泉氏は136票で3位に沈んだ。
1回目の投票で高市氏は国会議員票で2位、党員票は1位だった。とくに決戦投票で重視される議員票で72票を獲得して、46票の石破氏に大きな差をつけ、このまま勝利するかと思われた。
だが、決選投票では石破氏が215票を獲得し、194票の高市氏を押さえて、新総裁の座を掴み取った。獲得した議員票は、石破氏が189票、高市氏が173票で、2回目の投票で、国会議員が大挙して石破氏に流れたことがわかる。
石破氏が選ばれた3つのポイント
自民党の政務調査役を長く務めた政治評論家の田村重信氏は、こう解説する。
「石破氏が選ばれたポイントは3つほどあると思います。衆院の解散総選挙が近いこと、野党の立憲民主党が論戦に強い野田佳彦元首相を代表に選んだこと、そして総理大臣の靖国神社参拝など、とんがっている高市氏より総裁選5回目という安定感の石破氏、という結果でしょう」
田村氏が「とんがっている高市氏」というのは、タカ派的な高市氏の発言や行動が、批判を招きかねないという点だろう。高市氏はこれまで靖国神社に春・秋の例大祭と終戦の日に参拝をしてきたといい、総裁選中に靖国参拝について問われた際には、
「靖国神社は戦争を美化する施設ではなく、外交問題にされるべきではない。自分の気持ちに正直でありたい。適切な時期に普段通り、淡々とお参りしていく」
と総裁選で勝利し、総理大臣になっても靖国参拝を続けることを公言していた。