カナダのLNG事業運営会社に出向していたときの庄司さん(中央)(写真:本人提供)
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 かつては男性社員がほとんどだった総合商社の海外駐在員だが近年、女性も増えてきているという。今春まで夫と離れて娘2人とカナダに出向していた三菱商事の庄司恭子さんに、海外で仕事と育児を両立する実体験を聞いた。AERA2024年 9月30日号より。

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「家庭がバラバラになる懸念もありましたが、結果的に自分の成長という意味ではよい選択をしたと思っています」。三菱商事で「サステナビリティ部長」を務める庄司恭子さん(46)は、今春まで赴任していたカナダでの3年間をこう振り返った。

 同社などが権益を持つカナダのLNG(液化天然ガス)事業運営会社に副社長として出向。世界はまさに新型コロナウイルス禍にあって、カナダ渡航後は2週間の隔離を余儀なくされ、出だしから苦労の連続だった。

 出向先は英国のエネルギー大手、シェルからの出向者が多く、三菱商事は庄司さんを含め数人。全員が初めて会うスタッフというなか、持ち前の前向きで明るいキャラクターで社内に溶け込めたものの、育児との両立には苦労したという。

 海外駐在は2006〜09年のマレーシアに続いて2回目。マレーシアから帰国した同年に別の会社に勤める日本人男性と結婚し、12年に長女、15年に次女を出産した。

 カナダ赴任では、日本で仕事を持つ夫とは一緒に暮らすことはできなかった。そこで、8歳と5歳になった娘2人をどうするか。「もともと結婚する頃から海外志望であることを夫も知っていて、海外駐在になったら子どもの選択にまかせようと決めていたんです」

 とはいえ、カナダでの3人暮らしの苦労は、コロナ禍も重なって想定を超えた。シングルペアレント(ひとり親)であることに最も苦しんだ。

 カナダは託児所が少ないうえ、出張の多い身には、泊まり込みで面倒を見てくれるベビーシッターが欠かせない。なんとか知人の紹介で見つけることができ、ベビーシッター代の一部補助など三菱商事からのサポートにも助けられたという。

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帰宅後に宿題の丸つけ