世界で最も美しい湖とされるモレーン湖。カナダに赴任していたときに娘2人と訪れた(写真:本人提供)

帰宅後に宿題の丸つけ

「出張はなるべく3〜4日間で帰るようにはしていました。それでも年に1回は2週間、家を空けなければならず、ベビーシッターさんや子どもへの負担も多かった」。もちろん、信頼できるベビーシッターといえども、子どもの学校対応の代わりはきかない。日本と同じ教育を保つため通わせていた補習校からは毎週、大量の宿題。このため、帰宅後に子どもの解答の丸つけに追われたり、日本にいる夫とオンラインでつないでチェックしてもらったりした。一方で、親子3人でカナダでの思い出を残そうと、なるべく時間を見つけては観光地などを訪ねた。

 庄司さんが仕事も育児もエネルギッシュに走り続けられるのは、多感な時期を海外で過ごした自身のバックグラウンドも影響している。

 日本で生まれた後、親の仕事の関係で幼少期はタイに滞在、小学5年生の途中から高校時代までを米ロサンゼルスで過ごした。「日本と海外の架け橋になれるような仕事を」と三菱商事へ入社。自己紹介でもおなじみの「商事の庄司さん」となった。

 入社後はそんな希望通り、海外が主戦場のエネルギー分野を歩んだ。だからこそ、カナダ赴任を上司から打診されたとき、「行きたいです」と迷いはなかった。

 庄司さんは4月、ビジネスにおける環境や人権などの取り組みの旗振り役となる部長に就いた。「すべてがフレッシュ。入社以来のエネルギー畑とはやっていることがまったく異なり、新しい会社に来たような感じです」。カナダでの経験も生かし、部長として一人ひとりが働きやすい環境づくりを進める。

 総合商社の海外駐在といえば、かつては男性社員が中心だったが、育児との両立支援制度も充実してきた。「実際、女性の駐在員はすごく増えた。与えられた機会はしっかり果たしたい、という意識も高い印象があります」。そのうえで、次のようにアドバイスする。「経営陣の意識も変わり、会社もサポートしてくれる。みんな苦労はあると思いますが、悩みを自分で抱え込まずに、周りを頼っていくことが重要です」

(朝日新聞社・宮崎健)

AERA 2024年9月30日号より抜粋

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