独身でも子どもがいても「けっこうあり」

 さくさくと選択してそこに向かっているように見える友人たちも、意外と場当たり的な選択を繰り返して、結果的にそうなっている、ということなのかもしれません。何かを決めずにぐずぐずしている、というような焦りや反省はそんなに持たなくて平気だと個人的には思います。ちなみに私も好き勝手生きている罪悪感からか健康への恐怖は常にあって、病院や検査はとても苦手だったし避けていましたが、さすがに妊娠には自分で対処できず、仕方なくお医者に頼ってみたら割と平気になりました。

 意地悪な気持ちになったり漠然とした不安にさいなまれたりしながらも、私がそこそこ楽しく独身生活を続けてきたのも、計画していない妊娠になんとか場当たり的に対処しているのも、おそらくどちらの立場にも魅力的な友人・知人がいたからではないでしょうか。二、三歳、あるいはもっとずっと年上で長く独身を楽しんでいる先輩もいたから、このまま独身を続けていてもああいう人を目指せば惨めにはならないだろうと思えたし、妊娠した時は、子どもがいながらも自由に楽しく生きて仕事もしている友人の存在が心の支えになり、産む決心がつきました。

 多様な立場の友人を持つことは、自分の選択が決してひどく孤独なものではないと思わせてくれるだけでなく、自分とは違う立場の人の考えを想像するきっかけも与えてくれます。結婚子育てをすべきという世間的なプレッシャーを気にするよりは、日々友人たちと遊んで、こっちに転んでもけっこうありと思える選択肢を増やす方が、気持ちに余裕がでるかもしれません。

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鈴木涼美

鈴木涼美

1983年、東京都生まれ。慶應義塾大学在学中にAV女優としてデビューし、キャバクラなどで働きつつ、東京大学大学院修士課程を修了。日本経済新聞社で5年半勤務した後、フリーの文筆家に転身。恋愛コラムやエッセイなど活躍の幅を広げる中、小説第一作の『ギフテッド』、第二作の『グレイスレス』は、芥川賞候補に選出された。著書に、『身体を売ったらサヨウナラ 夜のオネエサンの愛と幸福論』『非・絶滅男女図鑑 男はホントに話を聞かないし、女も頑固に地図は読まない』など。近著は、源氏物語を題材にした小説『YUKARI』

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