鈴木涼美さん
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 作家・鈴木涼美さんの連載「涼美ネエサンの(特に役に立たない)オンナのお悩み道場」。本日お越しいただいた、悩めるオンナは……。

【写真】虚ろな瞳で、肩を露わに…母を亡くした頃の鈴木さん

Q. 【vol.24】出産が不安で、子育てに自信が持てないワタシ(30代女性/ハンドルネーム「K」)

 もうすぐ34歳を迎える独身女です。子どもを持つか持たないかで悩んでいます。昔から病院というものが苦手で、頑張って内科や歯医者などは克服しましたが、いまだに婦人科系は怖くて数年行けておりません(一度だけ行きましたが、検診直後にショックで貧血を起こしてしまいトラウマになりました)。出産のことを考えると、自分の体がショックや痛みに耐えられるか不安で、こんな子どもじみた悩みを抱える自分に命なんて育てられるはずがないと、子育てに対して後ろ向きです。

 かといって自立もままならず、寂しがりやな性格もあって一人で生きていく自信がありません。今はマッチングアプリでお相手を探しています。現代は多様化して独身を貫く人も多いですが、いまだに結婚や子育てをするべきだという女性への風当たりは強いと感じてしまいます。私が気にしすぎているだけなのでしょうか。女でいることの喜びも大いにわかりますが、同時にプレッシャーや肩身の狭さに押しつぶされそうにもなります。どのように考えたら、日々を上手くやり過ごせるようになるでしょうか。

A. 持つべきものは幸福そうにしている友人

 四十歳になった昨年の今頃、こうやってパソコンに向かうのは自宅か自宅から少しだけ坂をのぼったところにある喫茶店でした。いずれにせよタバコをひと箱以上横に置き、おかわりし放題のコーヒーをがぶがぶ飲みながら、大して進まない原稿を開いたまま、窓の外の明治通りの人間観察をしたり、漫画アプリで『呪術廻戦』や『キングダム』の最新話を読んだりしていました。怠惰でだらしない性格のせいでひどく昼夜逆転している上に、なんとなくいつも寝不足ではありましたが、私はそういう生活が自分に合っていると思っていたし、大きな変化なくこのまま年をとっていくものだとあまり疑わずに生きていました。

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鈴木涼美

鈴木涼美

1983年、東京都生まれ。慶應義塾大学在学中にAV女優としてデビューし、キャバクラなどで働きつつ、東京大学大学院修士課程を修了。日本経済新聞社で5年半勤務した後、フリーの文筆家に転身。恋愛コラムやエッセイなど活躍の幅を広げる中、小説第一作の『ギフテッド』、第二作の『グレイスレス』は、芥川賞候補に選出された。著書に、『身体を売ったらサヨウナラ 夜のオネエサンの愛と幸福論』『非・絶滅男女図鑑 男はホントに話を聞かないし、女も頑固に地図は読まない』など。近著は、源氏物語を題材にした小説『YUKARI』

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