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イラスト/フクイヒロシ

 古代ギリシャの哲学者であり医師でもあるヒポクラテスは、「すべての病気は腸から始まる」と言った。まさに万病のもととなる腸の不調を解消するため、順天堂大学医学部教授の小林弘幸氏が推奨する短時間の体操を、著書『お腹が弱い人のための30秒腸活』(アスコム)から抜粋して紹介する。

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 私は1995年に、順天堂大学医学部附属順天堂医院に日本初の便秘外来を開設して以来、便秘の悩みを抱える2万人以上の患者さんを診てきました。

 その結果たどり着いたのが、便秘をはじめとするさまざまなお腹のトラブルを解決するためには、腸内フローラのバランスを整える運動療法が必要不可欠であるという結論です。

 ちなみに、腸内フローラとは腸内細菌の集団(腸内細菌叢)のことで、腸を健康に保ちお腹のトラブルを解決するためには、腸内フローラのバランスが良いことがとても重要です。

 運動療法には、まさに腸内フローラのバランスを整える効果があり、それは海外の研究でも証明されています。 たとえば、アメリカのイリノイ大学では、「座りっぱなしの生活をしている人に、6週間、持久力を鍛える運動をしてもらい、糞便を検査して腸内環境の変化を調べる」という実験が行われました。

 その結果、腸内の「短鎖脂肪酸」の濃度が上がっていることがわかったのです。短鎖脂肪酸は、酪酸、酢酸、プロピオン酸といった有機酸で、腸の粘膜を守る、腸のぜん動運動(消化された食べものや便など、腸の内容物を移動させる動き)を促すなどの働きがあり、腸の健康を維持するためには必要不可欠です。
 

自律神経の乱れを整えるのが肝要

 また、運動療法を行い、体を動かしたり姿勢を正したりすると、お腹のトラブルの根本的な原因となる自律神経の乱れを整えることができ、腸のぜん動運動が促され、頑固な便秘なども改善されます。

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小林弘幸

小林弘幸

小林弘幸(こばやし・ひろゆき) 順天堂大学医学部教授。日本スポーツ協会公認スポーツドクター。1987年、順天堂大学医学部卒業。92年、同大学大学院医学研究科修了。ロンドン大学付属英国王立小児病院外科などの勤務を経て順天堂大学小児科講師、助教授を歴任。腸と自律神経研究の第一人者。『医者が考案した「長生きみそ汁」』など著書多数。テレビなどメディア出演も多数。

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お腹のトラブルには体の外からの刺激が大事