さいたま市の「2021年度寄付受入れ状況一覧」。さまざまな物品がPTAから学校へ寄付されている

握りつぶされた指摘

 神奈川県に暮らすアキさん(仮名、40代)は、PTA会費で小学校のカーテンを買い替えていることに疑問を抱いた。学校が使用する連絡メールのシステム更新料も、PTA会費から支払われていた。

「PTA会長と学校の管理職が話し合って何を買うか決めていた。その流れもおかしいと思いました」(アキさん)

 PTAの書面総会で、「学校の備品をPTA会費で購入するのは地方財政法に抵触する恐れがあるので、今後は公費で購入することを検討してほしい」と訴えた。ところがその後、会員に配られた総会報告書にはアキさんの訴えは記載されていなかった。意見を「握りつぶされた」と感じた。

「文句を言う保護者がいる」

 PTAは任意団体であり、入会には同意書が必要だ。ところが、慣習的に同意をとらずに保護者や教員を加入させているPTAが相当数ある。強制加入により徴収されたPTA会費が、学校への寄付に使われれば、地方財政法第4条の5「割当的寄付金等の禁止」に違反する可能性がある。

 PTA会費について意見してから、アキさんはPTA会長から無視されるようになった。アキさんがベルマーク委員会の活動をしていると、会長がそばにきて周囲に聞こえるような声で、こう言った。

「『PTA会費で学校のものを買うことに文句を言う保護者がいる。そういう人は学校にお金がかかるということを全然理解していない』。私のことを言っているんだなと思いました」(同)

 アキさんは、PTAが金を出さないと公立学校の運営が成り立たないことなどあってはならない、と訴える。

「真の自発的な寄付」なのか

 9年前、大分市在住のヨウコさん(仮名)は、小学校のPTAを退会した。PTAが任意加入団体であることが周知されず、強制加入であることに納得できなかった。

「そのときの校長はPTAに金と人手を依存していた。『PTAがないと運動会がまわらない』と平気で口にしていた」

 強制加入のもとに集められたPTAの金が学校に使われていることに疑問を抱いた。

「PTAに納得したうえで入会して、それで集めたお金であれば『真の自発的な寄付』になると思いますが、実際は、大半がそうではない」(ヨウコさん)

 学校の備品は、学校教育法で公費による購入が原則と定められている。しかし、文部科学省が2012年に出した「学校関係団体が実施する事業に係る兼職兼業等の取扱い及び学校における会計処理の適正化についての留意事項等について」という通知に基づいて、学校は寄付を受け取ることができる。

PTAから公立小学校(大分市)へ約170万円のグランドピアノを寄付することを記した寄付採納手続きの書類
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「自発的な寄付」はOK