自民党総裁選への立候補表明の記者会見に臨む高市早苗氏(24年9月9日)

 日本郵便に確認したところ、利用量が多い顧客とは個別に契約を結んでおり、引き受け方法、仕分け方法の条件を個別に設定しているとのことだった。減額される郵送料については「個別に締結している契約の内容に関しては答えられない」との回答だった。

 こうした経緯があり、9月4日に選管から文書の郵送禁止が通知された時にはすでに手遅れだったと主張する。

「業者さんに確認したら、8月中に全部出し終わっているということなので、どうしようもなかった。まさか全国の郵便局をまわって、回収するわけにもいかないですし」(同)

 この証言通り、1通57円で30万部のリーフレットを送ったとなると、約1710万円の郵送料がかかる。その費用はどこから捻出したのだろうか。

「今回の郵送料は寄付などを集めた奈良県第二支部から出しています。一般の方の後援会費も献金もほとんど第二支部で受けるようにしていますから、政党助成金は一切使っていません」(高市陣営関係者)

 ライバル陣営から批判があること、そして岸田首相が追加対応を選管に指示したことについてはこう反論する。

「なんで高市だけなんだろうかと思います。他陣営も文書を郵送しているじゃないですか。SNSにもたくさん画像が出ていますよね。その中には、総裁選のあいさつが入ったものもありますし、消印が10日、11日のものもある。繰り返しますが、高市は総裁選目的で出したわけではないのですから」

 選管の逢沢委員長は19日、「11日に高市さんに注意をした。同じ案件なので重ねて厳重注意するのは制度になじまない」と語り、追加の処分はしないと決定した。リーフレットが投票行動に影響を与える可能性も指摘されているため、選管は正しい情報に基づいた投票をするよう声明を出した。

 政治ジャーナリストの角谷浩一氏は高市氏のリーフレット送付についてこう語る。

「9月に岸田首相の総裁任期が切れることはあらかじめわかっていました。高市さんは総裁選への出馬を目指していたわけですから、『余計なことを書かなければ出しても問題がない』と極めて戦略的に進めたのではないでしょうか。追及されたときの弁明も含めて準備はしていたのだと思います」

 高市氏の推薦人20人の中のうち、13人はいわゆる「裏金」を受け取っていたと党本部が公表した議員だ。裏金事件の主な舞台となった旧安倍派に所属する議員も14人と9人の候補者の中で最も多い。この点についても角谷氏は苦言を呈する。

「高市さんは『推薦人が誰になるのか知らなかった。翌日の新聞で知った』と言っていましたが、そんなトボケた説明は通用しないでしょう。他の陣営は裏金議員の名前を出さないようにしたり、推薦人名簿の出し方を調整したりといろいろ策を練っている。高市さんにそれが見られないところをみると、裏金問題には関心がないと思われても仕方がないでしょう」(角谷氏)

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