今ならわかる「優勝を目指さない」宣言
来年は9年ぶりのV奪回が達成可能な目標となる。だが、気になるのが新庄監督の去就だ。順当に考えれば来季以降も新庄監督の指揮によって常勝軍団の構築が期待されるが、日本ハムを取材するスポーツ紙記者は苦笑いを浮かべる。
「新庄監督は何を考えているか読めない。現役時代から世間の常識、尺度に捉われずに生きてきた人なので、日本ハムを優勝が狙えるチームに作り上げて次期監督に継承できると判断したら、区切りをつける可能性がゼロではない。安定を好む性格ではないので、新たなことにチャレンジすることも考えられる。もちろん、選手やファンは新庄監督に続投してほしいと思っているでしょうけど、去就が読めないですね」
確かに、新庄監督は枠にとらわれない生き方をしてきた。阪神時代は野村克也監督の下で投打の二刀流に挑戦して話題になった。巨人戦で敬遠の球を打ってサヨナラ安打したエピソードも有名だ。FA宣言した際は国内他球団の好条件を蹴って、メジャーに挑戦した。日本ハムに移籍する時は、「札幌ドームを満員にする」「チームを日本一にする」と記者会見で宣言して有言実行。現役引退後はバリ島に移住した後、47歳の時に現役復帰を宣言し、1年間のトレーニング期間を経て、12球団合同トライアウトに参加した。NPBの各球団は獲得を見送ったが、トライアウトで適時打を放って話題になった。
新庄監督は日本ハムの監督に就任した際、「一年一年が勝負。複数年だと気持ちが緩む」と自身の希望で1年契約を結んだことを明かしている。就任1年目の目標を聞かれると、「優勝なんか一切目指しません」と言い放ち、「優勝という高い目標を持ちすぎると、選手はうまくいかない。一日一日地味な練習を積み重ねて9月ぐらいになって優勝争いをしていたら、さあ、優勝を目指そうと。そういうチームにしたい」と語っていた。この時は「優勝を目指さない」と異色の宣言がメディアで大きく取り上げられたが、今振り返ると地に足のついた発言だと、印象が全く変わる。
3年の月日を経て日本ハムは、球界で最も注目度が高いチームに進化した。CS出場をほぼ確実にし、下剋上で日本一も狙える位置にある。
新庄監督は、その後の自身の行く末をどう見据えているのだろう。来季以降も日本ハムで指揮をふるうのか。決断が注目される。
(今川秀悟)