※写真はイメージです。本文とは関係ありません(Ivanova Nataliia / iStock / Getty Images Plus)
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 男女の脳に能力的な差はあるのか? これは太古から続けられてきた研究だ。北海道大学の黒岩麻里教授は自著『「Y」の悲劇 男たちが直面するY染色体消滅の真実』の中で、性差に関する研究やデータを紹介している。数多くの研究結果が示すものとは? 本書より、一部抜粋・再構成してお届けする。

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パンデミックと性差

 2019年12月、中国の湖北省東部の武漢市を発端とし、新型コロナウイルス感染症が世界中に蔓延しました。日本国内で初めて感染者が確認されたのは、2020年1月15日。発症したのは、中国・武漢から帰国した神奈川県の男性でした。

 私が住む北海道では、同年1月28日に、初めて新型コロナウイルスの感染者が確認されました。それは、中国・武漢市から北海道に旅行に来ている女性でした。そして、全国に先駆けて、瞬く間に新型コロナウイルスの感染は北海道に広がり、それを受けて、2月には鈴木直道知事が道独自の「緊急事態宣言」を出し、道内は大変緊迫した状態となりました。

 その頃、私はリモートで、関東や関西の大学に所属している共同研究者と、新しい研究プロジェクトについてのやり取りをしていました。しかし、共同研究者らからはまったく危機感は感じられず、北海道の緊張状態にはピンときていない様子でした。

 本州はずいぶんと状況が違うのだなあと驚いたのをよく覚えています。ですがそれも束の間で、新型コロナウイルスはすぐさま日本中に蔓延し、学校は休校、会社はリモートワーク、医療はひっ迫し、マスクは売り切れと、生活は一変しました。人類史上最悪ともいわれるパンデミック(世界的大流行)が私たちを襲ったのです。

 パンデミックが訪れ、大学では、あらゆる教育や研究活動がオンラインとなりました。講義も、実習も、学生とのミーティングやディスカッションも、会議も、共同研究者との打ち合わせも、飲み会でさえも、コンピューターのモニター越しにコミュニケーションをとることが当たり前の時間を過ごしました。

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