今の時代にフィットした生き方や働き方の先にある女性リーダー像って? そんなテーマを掲げて編集長の鎌田倫子が女性リーダーにインタビューする連載。4人目は、ポーラ代表取締役社長の及川美紀さんにご登場いただいた。後編では、経営で大切にしていることや、ご自身のキャリアでもがいた経験を語ってもらった。
――社長になられて、すぐコロナ禍に。化粧品はどこも売り上げが落ちましたよね。販売員が直接消費者と接する機会が減って。及川さんはそのとき、経営者としてどうやって難局を乗り越えたのでしょうか。
及川美紀さん(以下、敬称略):誰も経験していないことを乗り越えなくてはいけなくなって、私一人で背負うのを辞めたんです。社長だから、結果は全部私が受け止めるから、みんなで考えようと言った。あのとき、力を注いだのはチームビルディングでした。私一人があがいて乗り越えられるようなものではなかったから、社内を一枚岩にしないといけなかったのです。
その中で、私はずっと「あなたたちはどうなりたいですか」「どういう会社にしたいですか」と、社員の「I will」を問い続けてきました。
――混乱のさなかにあると、はやく具体策を考えて手を打ちたくなるものです。「I will」は大事でも、そんな悠長なことを言ってはられないという気持ちになりませんか。
及川:あのときはなにもかも止まっちゃったんで、目の前にある手段は誰でも考え付いたと思います。例えば、お客様とデジタルで繋がろうみたいなことは、私が言わなくても誰かが思いついた。だからビジネスの打ち手は現場に任せておこうと。
このコロナ禍で一番大きかったのは、世の中から求められるものが変わってきたことです。お客様は物を買うことだけじゃなくて、人と繋がることを求めるようになってきた。そういう大きな思考の変化があったなら、なぜポーラという会社は世の中に存在するのか、われわれ社員はどうありたいのか、社会に対してどんなことをやっていくのかということをつきつめて、そのもとに動いていくのが大事だと考えました。