店主の大友さんがらーめんを作る様子が目の前で見られる、ライブ感あふれる店内(筆者撮影)

 腕試しのために2012年、ラーメンの新人を発掘するイベントにいくつか出場するものの、敗退。自信のあるラーメンができていただけにとても悔しく、泣き明かした。

 だが、ここで止まってはいられないと、ラーメン作りと平行して物件探しを始めた。

 開業資金が貯まっていなかったため、都内でオープンすることは難しく、埼玉県川口市に見つけた家賃の安い物件に決める。駅前ではなく住宅街の中で土地勘もなかったが、多少駅から遠くても人が呼べるぐらいの店になれなければだめだろうと思い、思い切って出店することにした。

 こうして13年4月「らーめん かねかつ」はオープンした。店名は尊敬する祖父の名前をもらったものである。

「らーめん かねかつ」/埼玉県さいたま市北浦和3-1-6/10時〜15時 営業(食材なくなり次第終了)日祝定休/営業情報は店のX(@yourmonky)でも発信中(筆者撮影)

 オープンの時祝い花が出ていたので近隣の人たちが何人が見に来たものの、初日からお客さんは全然来なかった。その後、ラーメンファンの知人が食べに来てくれるようになり、そこから少しずつ口コミが広がるようになる。さらに、同年の『ラーメンWalker』の新店紹介のコーナーで見開きで紹介され、翌14年の『川口市Walker』でも見開きで紹介された。次第に地域の人たちにも知られるようになった。

「かねかつ」はオープン当初から常にギリギリの戦いであった。

 当初はスープに比内地鶏の親鶏の丸鶏を使っていたが、ある日業者さんが引退することになり、ものが入らなくなってしまった。その後、川俣シャモに切り替えたが、これも取れる量に制限があって使えなくなってしまう。

 こうして、最終的に出会ったのが「ホロホロ鳥」である。高価で供給も安定しておらず、不安はあったが、いざ試作して食べたらこれしかないと確信した。他と同じことをやりたくないと考える大友さんはホロホロ鳥を使うことに決める。結果、農場と直接契約することで数を確保することができた。

ホロホロ鳥の丸鶏を中心に醤油感をしっかりきかせた分厚いスープは絶品だ(筆者撮影)

 スープだけでなく、麺もこだわりを見せる。

「もともとは製麺所から麺をとっていましたが、どうしても自家製麺をやりたくて、15年からは麺を手打ちに切り替えました。本当は製麺機を置いて自家製麺にすることを考えていたんですが、場所がなく手打ちをするしかなかったというのが本当の話です」(大友さん)

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手打ち麺の奥深さに「衝撃」を受けた一杯