らーめん かねかつの「らーめん」は一杯1100円。具は鶏チャーシュー2種類、豚チャーシュー、三つ葉、ネギ。麺は極太縮れの手打ち麺(筆者撮影)
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 日本に数多くあるラーメン店の中でも、屈指の名店と呼ばれる店がある。そんな名店と、その店主が愛する一杯を紹介する本連載。今回は埼玉を代表する塩ラーメンの人気店「中華そば 葵」の店主・梅原さんの愛する名店「らーめん かねかつ」をご紹介する。

【写真】ツルモチ感がたまらない…「官能的ともいえる素晴らしい手打ち麺」

 JR北浦和駅から徒歩約2分。官能的ともいえる素晴らしい手打ち麺とホロホロ鳥の豊潤なスープで人気を博す名店がある。「らーめん かねかつ」だ。「食べログ」では3.91点を誇り、埼玉県のラーメン店では堂々の2位につく(2024年9月12日現在)。

 店主の大友健さんは福島県いわき市出身。幼少期は福島県を中心に展開するチェーン店「会津っぽ」に家族でよく行き、ラーメンを食べていた。東京で一人暮らしをしたいという理由で大学を受験し、上京する。

 しかし、勉強が嫌でバンドに明け暮れる日々。結局、大学2年で中退してしまう。バンドをやるなかで、「将来サラリーマンにはなりたくない」と思い、「就活をしないなら大学に行っていても仕方ない」と思ったのであった。

「らーめん かねかつ」店主の大友健さん(筆者撮影)

 19歳からは当時東京・町田にあった「魯山人」というラーメン店でアルバイトをした。厳しい現場で、ラーメンの基礎を勉強し、平ざるで麺上げをしていた。この頃からラーメンを作る楽しさを覚えていった。

 26歳までアルバイトをしながらバンド活動を続けていた。だが、いよいよ就職をしなくてはと思い立ち、焼き鳥店で働き始める。鶏のさばき方やスープの取り方などを勉強していく中で、「いつかラーメン屋になれたら」という思いが湧いてきた。その後、居酒屋に転職し飲食の勉強を続けた。

 ラーメン屋として独立するためには製麺を勉強せねばと思い、28歳で東京・太田区にある製麺所・丸山製麺に入社する。いつか独立した時に自家製麺をやるべく、3年間製麺をしっかりと学んでいった。この間も複数のラーメン店でアルバイトをし、独立に向けての準備を進めていったのである。

 当時、町田にあった「69‘N’ROLL ONE」で食べたラーメンに衝撃を受け、独立するならばインパクトのある醤油ラーメンで勝負したいと思っていた。もともとはラーメン居酒屋をやろうと思っていたが、ラーメン一本で勝負する「69‘N’ROLL ONE」の嶋崎店主に刺激を受け、醤油ラーメンの試作を進めていった。

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井手隊長

井手隊長

井手隊長(いでたいちょう)/全国47都道府県のラーメンを食べ歩くラーメンライター。Yahoo!ニュース、東洋経済オンライン、AERA dot.など年間100本以上の記事を執筆。その他、テレビ番組出演・監修、イベントMCなどで活躍中。ミュージシャンとしてはサザンオールスターズのトリビュートバンド「井手隊長バンド」などで活動中。本の要約サービス フライヤー 執行役員、「読者が選ぶビジネス書グランプリ」事務局長も務める。著書に『できる人だけが知っている 「ここだけの話」を聞く技術』

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