4月14日夜に発生し、甚大な被害をもたらした熊本地震。発生直後から現在まで、TwitterやFacebook 等のSNSで、タイムライン上に流れた多数の流言、いわゆる「デマ」を目にした方も多いのではないでしょうか?
「地震のせいで熊本の動物園からライオンが逃げた」
「イオンモール熊本で火災が発生した」
「地震の影響で、鹿児島県の川内原発で火災発生」
こうしたツイートと共に添付された写真には、海外の事件や過去の出来事、映画のワンシーンの画像を流用した巧妙なものや、
「熊本では、朝鮮人の暴動に気を付けて」
「熊本の朝鮮人が井戸に毒を投げ入れた」
など、関東大震災で起きた朝鮮人虐殺事件を想起させるような悪質な内容も多数拡散されています。
2011年の東日本大震災でも、「被災地で外国人による犯罪被害が急増中」「有害物質の雨が降るから気を付けて」「震災は、米軍の"地震兵器"が引き起こした陰謀だ」など、根拠のないデマが流れましたが、こういった明らかなウソ・陰謀論は、落ち着いて見れば、すぐに誤情報と見抜けるでしょう。
一方で、真偽の区別がつきにくく、つい拡散してしまいがちなのが、私たちの善意をターゲットにした『支援呼びかけデマ』の存在です。
評論家の荻上チキさんは、東日本大震災発生時の災害支援のヒントを集めた自著『災害支援手帖』(木楽舎刊)で、「善意があれど、善行になるとは限らない」と述べ、善意で行ったことでも、やり方を間違えれば、逆に被災地に大きな負担をかけてしまう場合もあることを指摘しています。
「『それは大変だ』とその情報の真偽を確認せずに現地に駆けつけてしまったり、あるいはリツイートやシェアで『拡散』したりしてしまうと、それが誤った情報だったときに被災地に迷惑をかけることもありますし、貴重な人手や物資が浪費されてしまうかもしれません」(同書より)
たとえば、同書の事例では、東日本大震災発生時に
「【拡散希望】○○町で支援物資が不足しています、すぐに●●を送ってください」
「○○で人手が足りません!住所は~」
といったデマが、リツイートやシェアで拡散されたことが挙げられています。
このデマの文面では、被災自治体のリアルな住所が明記されていたため、信じて物資を送ってしまう人が多数続出しましたが、その自治体は、個人からの物資を受け入れていませんでした。不要な物資は「支援ゴミ」として処理するほかなく、処理費用や労力など、自治体に迷惑をかけてしまった結果になったのです。
では、こういったデマによる"善意の暴走"を招かないために、私たちはどのような対応をすれば良いのでしょうか。
荻上さん同書でこう記します。
「まず、そもそも『間違った情報』に乗らないことがとても重要です。しっかりとした活動実績のあるNPO法人やボランティア団体は、たいてい公式ホームページを開設していますので、そういったものにアクセスして『公式の情報』をつかむことが一番です」
大災害が起こった時、私たちは「一刻も早く支援をしたい」「何かしなければ」と焦ってしまいがちですが、こういう非常時だからにこそ、SNSでの出所不明な情報ではなくて、「公式情報」を参照し、「誰が・いつ・どこで」発信した情報なのか見極める沈着さが必須だと言えるでしょう。
今回の震災を受け、荻上さんは同書の中身を15日から全ページ無料公開しています。NPOやボランティアなどの支援団体を取材し、支援に役立つヒントが満載の同書は、被災地のニーズに合った支援をするために必読の1冊となっています。
■『災害支援手帖』臨時公開版【公開期限未定】
http://books.kirakusha.com/saigaishien/