写真はイメージです(写真:Getty Images)
この記事の写真をすべて見る

 企業が保護者に内定や入社の確認をする「オヤカク」が増えている。オヤカクが増加傾向にある背景には何があるのか。大学教員が明かす、いまどきの就活事情。AERA 2024年9月16日号より。

【図表を見る】「内定学生の判断に大きな影響を与える相手は?」はこちら

*  *  *

「保護者が有名な大手企業しかエントリーを認めず、大学4年の秋まで内定が取れなかった学生もいます」

 こう吐露するのは、学生の就活相談に応じてきた大学教員の50代女性だ。

 なかなか内定が取れず思い悩んだ学生が就活相談に訪れたのは夏休み明け。面談をしたところ、本人ではなく保護者が「大手」にこだわっていたことが分かった。女性は学生に「もう少し内定の取りやすい、大学に求人票が来ている大手以外も視野に入れてみれば」とアドバイス。その後、保護者も現実を受け止めて方向転換を認め、そのタイミングで地元企業の追加募集が出て、秋の終わりにかろうじて内定が取れた。女性はこう振り返る。

「最初から大手以外も検討に入れていれば選択肢も多く、本人もしんどい思いをしなくて済んだと思います」

 一方で女性は、親の介入に困惑しながらも最後まで「言いなり」の形で就職先を決めなくてよかった、とも思うという。

「親の希望する会社に就職できたとしても、その先が心配です。少しでも逆境にさらされると、『自分が希望した就職先ではなかったから』と、すぐに退職してしまうことにならないか。実際、そういうケースは少なくありません」

 若手の離職率が高いことはよく知られているが、その引き金となる「人間関係」や「仕事の内容」への不満の背景に、「そもそも自分で決めた就職先ではなかったから」という表には出にくい要素が一定程度含まれていても不思議ではない。自分もそうでしたが、と前置きした上で女性はこう続けた。

「自分で選択した道は、失敗しても自分で選んだのだからと納得できます。しかし、親がレールを敷いて無理やり進ませた道は、最終的には本人が納得していないので続かないし、何かあったら子は親のせいにしてしまいがちです」

次のページ
大学選びも親の意向