阿部監督はFA選手の“功罪”を現役時代から現場で見てきた。2001年に巨人に入団後、多くのFA選手が加入してともにプレーもした。しかし成功だったと言えるのは野手では小笠原道大(2006年オフに日本ハムから加入)、投手では杉内俊哉(2011年オフにソフトバンクから加入)など数えるほどしかいない。
また近年も活躍しているのは外野手の丸佳浩(2018年オフに広島から加入)くらい。2020年のオフにともにDeNAからFA移籍で入団した先発右腕の井納翔一は2年で戦力外、外野手の梶谷隆幸も怪我に悩まされ続け戦力になっているとは言い難い。
「FA補強はハマった時の爆発力もあるが逆にリスクも大きい。阿部監督はFA選手を獲得した際の影響をチーム内部で見てきた。総合的に判断してFA補強の必要性はないと考えてもおかしくはない」(在京テレビ局スポーツ担当者)
加えて、最近は巨人がFA選手の獲得に参戦しても失敗に終わるケースも多くなっている。2019年オフには投手の美馬学(楽天→ロッテ)、野手の鈴木大地(ロッテ→楽天)の両獲りに動いたがいずれの選手も他球団へ移籍。2022年オフにも打撃力が売りの捕手、森友哉(西武→オリックス)にも振られる形となった。
だが、FA選手を獲れなかったことは「必ずしもマイナスではない」という声もある。
「補強が上手く行ってないように見えるが結果的には良かったと感じる。ドラフトでは好素材が獲得できている。ファーム施設の充実もあり若手が成長して一軍でも活躍し始めている。試行錯誤の末に巨人のあるべき姿が見つかったように思える」(巨人関係者)
FA選手の獲得が上手くいかなかった原因の1つには「巨人ブランドの衰退」もあるかもしれない。しかしそれによって巨人が進むべき道が明確になったようでもある。
「FAで入団する選手は年齢もそれなりで、加入後に活躍できる期間も長くない。国内外のスカウティングを入念にやれば、長く戦力となれる生え抜きを多く獲得できる。FAに頼ったのは過去のことで、新たなチーム編成方法へ移行したことで巨人の今後は明るくなったと思う。余程でない限り、FA補強はしなくても良いのではないか」(巨人OB)