投手で面白い存在となっているのがオリックスを自由契約となってDeNAに移籍した中川颯だ。昨年も二軍では安定した投球を続けており、他球団からの評価は高く、オリックス時代は育成契約でありながらDeNAでは支配下として契約されている。4月30日の中日戦で先発として6回を1失点と好投して初勝利をマークすると、その後は不安定な投球が続き二軍での調整時期があったものの、8月には一軍に復帰。リリーフとして現在6試合連続無失点と、安定した投球を続けている。防御率は4点台後半だが、これは先発として大量失点を喫した2試合が影響しているものであり、全体的には抑えている試合の方が目立つ。なかなかいないタイプのアンダースローだけに、来季も貴重な戦力となりそうだ。
成績を残している選手がいる一方で、苦しい立場となっている選手も少なくない。中日では大ベテランの中島宏之が代打やファーストのバックアップ要員として期待されたが、ここまでノーヒットで二軍暮らしが続いている。また同じ中日ではソフトバンクから移籍した上林誠知も外野のレギュラー候補として期待されながら、ここまで18安打、打率1割台と結果を残すことができていない。実績のある投手としてはソフトバンクからDeNAに移籍した森唯斗も苦しんでいる。開幕当初はリリーフとしてスタートしたが、4月29日の中日戦では2番手として登板して6失点と炎上。二軍での調整を経て先発として復帰したが、試合を作れずに再びリリーフに回っている。ストレートは140キロ台前半が多く、武器であるカットボールも威力が落ちているように見える。このままの成績で終われば、契約更新は難しいと言えそうだ。
実績はあっても結果を残せなければ現役を続行することはできず、近年はデータなども増えて選手にとってはさらに厳しい状況となっている。それでも一度は主力となった選手も多いだけに、何とか残りのシーズンで存在感を示してくれることを期待したい。(文・西尾典文)
西尾典文/1979年生まれ。愛知県出身。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究。主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間400試合以上を現場で取材し、執筆活動を行っている。ドラフト情報を研究する団体「プロアマ野球研究所(PABBlab)」主任研究員。