2人の出会いは6年前、山中瑶子監督の作品に感動した河合優実さんが手紙を渡したことだった(撮影/写真映像部・東川哲也)
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 Z世代のあいまいさと憂鬱を圧倒的なパワーで表現し、世界が共感した映画「ナミビアの砂漠」の監督・山中瑶子さんと主人公を演じた河合優実さん。新時代を駆ける二人がみる世界とは。AERA 2024年9月9日号より。

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――河合優実さん演じる21歳のカナを主人公にした「ナミビアの砂漠」。監督の山中瑶子さんは今年のカンヌ国際映画祭で、女性監督として史上最年少となる「国際映画批評家連盟賞」を受賞。観客から喝采が送られた。

山中:カンヌでは20歳くらいの子たちからけっこう声をかけてもらったんです。「私もカナの状態を知っている」みたいな。それにみなさん河合さんの伸び伸びとした身体に感動して「美しい映画だ」って言ってくれて。

モヤッとした気持ち

河合:通じるんだ!って嬉しかったですね。向こうでも「現代の日本」や「Z世代」がキーワードとしてあがってきて、山中監督が描いた世界の現実味が、自然と今の社会全体の空気や世代に共通するものを感じさせたんだと思いました。

――自分を持て余し、時に暴れ、壊れることもあるカナ。エキセントリックにみえて身近にいそうなキャラクターでもある。

山中:10代や20代前半の頃ってみんなそうだったんじゃないかなと思うんです。自分が抱えてるモヤッとした気持ちが言語化できない、いやモヤッとしてることにさえ気付けないというか。カナは感情の発露の仕方にちょっと極端なところはあるけれど、根底はすごく普通のことじゃないかなと思って。

河合:カナのなかでは思考性も社会性もあって、頑張ってバランスを取ろうとはしているんですよね。この魅力的な主人公をどうやったら表現できるかなと考えました。どんな役もある面で自分とそっくりだなと思うところから膨らませていくんです。今回似ているなと思ったのは……、自分勝手なところ。

山中:全然、感じませんけど?

河合:いや私、けっこう嫌なところありますよ。人の気持ちを考えられないとか。

山中:あはは(笑)。でも確かに冒頭のカフェのシーンは河合さんから「自分は人の話を聞いているようで聞いてない時がある」と聞いたのを、そのままカナのキャラクターに入れたんでした。

河合:で、その友達が「帰りたくない」って泣き出すと急に優しくできる、みたいなのもすごくわかるんです。そんなに真剣に向き合う気がないのに、そのとき一緒にいてあげよう、と思う優しさは本物、みたいな。嫌な人ですね(笑)。

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