「ナミビアの砂漠」は9月6日から全国公開(c)2024『ナミビアの砂漠』製作委員会

――河合さんと山中監督の出会いは6年前に遡る。山中監督が大学休学中に制作した前作「あみこ」に感動した高校生の河合さんが「俳優になります。いつかキャスティングしてください」という内容の手紙を渡したのだ。

河合:私はたぶん守りに入っている自分を好きになれないんです。もっといいものを作るために動いてみたい。だから監督に手紙を渡したりもできる。そこはカナとは違う気はします。

山中:でもやっぱり自分たち世代のベースに「あきらめ」の感覚があることは実感しています。私は1997年生まれで、9.11アメリカ同時多発テロが起きたときに保育園生。テレビをつけるとイラク戦争とかタリバンとか、お先真っ暗感がどうしてもあった。でも「何も期待してない」からこそどこかで「どうなってもいい」という気持ちが私の場合はあって、逆に自由になれるというか。

河合:確かに「終わりに向かっているんだな」っていう感覚はクリアにあります。でもだからといって「どうしよう」という危機感もないし、それぞれの楽しいことを消費して生きて、もうそれでいいんじゃね?みたいな空気があるのかな。

関係性のバランスとる

――そんな時代でも人は誰かを欲さずにいられない。カナの恋愛観や対人関係に自身と重なるところはあったのだろうか?

河合:カナと恋人のハヤシは関係性のバランスを取るためにぶつかり合いをしますよね。自分はそこまで激しいことはしないし、自分の中で「いや、これはしない方がお互いのためだな」と判断しているところがある。でもカナはそういうラインを越えることができる。カナの方がピュアで自由だなと思えて、ちょっと羨ましくもありました。

山中:私は何も考えないとけっこう自分の話ばっかりしちゃうんですよね。子どものころ鍵っ子で、家で誰も自分と話をしてくれなかったからそうなっちゃったんですけど。

河合:へえ~! 私はよく友達に「自分の話、しないよね」って言われるんですよね。聞き役のことが多い。

山中:でもだんだんと「コミュニケーションって相手との順番があるな」と気づいて。

河合:あはは(笑)。

山中:そこからは、かなり気を使って人と接しています。でも監督は自分のやりたいことを言わないと始まらないから、今はそれがすごく嬉しいんです。

(構成/フリーランス記者・中村千晶)

AERA 2024年9月9日号

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