このように、かつての職場での評判が巡り巡って、次の転職先にまで及ぶこともある。自身の行いをどこで誰が見ているかわからない。私自身も気を引き締めようと思った出来事でもあった。
適性検査と「キラー質問」
限られた選考プロセスで、隠れパワハラ人材を見抜くのは相当困難ではあるのだが、私なりの苦肉の対策方法についてお伝えしようと思う。
まず1つ目の対策として取り入れているのが、「適性検査」だ。中でも、脳科学や統計学に基づいて開発された、「TAL(タル)」という適性検査を活用している。
「TAL」は、ストレス耐性やメンタル疾患発症傾向を測ると同時に、応募者自身の内面の特性を把握・分析できるのが特徴だ。主に以下の項目について分析できる。
この検査は、36問の文章問題(7肢2択)と図形配置問題(1問のみ)で構成されている。出題内容がかなり独創的で、いったい何が正解なのかがわかりにくい。そのため、応募者が事前に対策しづらく、より本人の特性に近い内的傾向をつかめるのがメリットだ。
もちろん、この分析結果だけで応募者がパワハラするかどうかを見抜けるわけではない。だが、仕事で思わぬストレスがかかった時にその人がどういう状況に陥りやすいか、はたまたどういう問題行動を起こしそうか、ある程度の傾向をつかむことはできる。
分析結果でよほど気になる点が見つかった場合は、面接官全員に共有して、その気になる点を面接でも掘り下げる。そして結果の通り、問題行動を起こしそうだと判断したら、不採用にする。
このように、あくまで“選考の補助ツール”の一つとして使うわけだが、応募者の人間性を推し量るうえで役立っているのは間違いない。
最もその人物を知る手がかりを得られるのは、やはり面接の時間だ。手の内を明かすことになるので、質問の中身は言えないのだが、私自身、パワハラ人材を見抜くための「キラー質問」を用意している。
その質問をすると、ほぼ全員が驚いたり、困惑したりする表情をするので、応募者にとってはかなり想定外の内容なのだと思う。
私がそこで注目しているのは、答えの中身というより、質問に対する“答え方”だ。
返答に時間がかかってもいいので、「自分自身を冷静に客観視した答えができているか?」「しっかりと自分の言葉で誠実に語っているか?」を注視している。答えをあやふやにしてごまかしたり、変に流暢だったりするのは疑わしいと見ている。