「なんか伝わってこんわなあ」
昨年就任した岡田彰布監督はチームを38年ぶりの日本一に導き、今季は球団史上初の連覇を目標に掲げていた。選手の自主性を尊重するスタンスだが、手綱を締めるところは締める。ただ、選手たちとの温度差を感じる場面がたびたび見られるようになった。
8月12日の巨人戦。初回2死二塁で巨人・岡本のゴロを捕球した三塁手・佐藤の一塁への送球がワンバウンドで逸れる悪送球になり、二塁走者が本塁に生還。これがこの試合の決勝点となった。試合後、岡田監督は「俺一人で叫んだからな。『ワンバン!』って。恥ずかしかったわ」と明かした。佐藤の送球に反応してベンチから「ワンバウンドだ」と野手に警告を発したのだが、指揮官一人が大声を出していたというのだ。
また、18日の中日戦で4-8と敗れた試合後には、「なんかあんまり伝わってこんわなあ、俺一人で怒ってるみたいやけど」とコメントした。
阪神を取材するスポーツ紙記者はこう語る。
「岡田監督と選手たちの間に溝があるわけではありませんが、いまの阪神は闘志を表に出す選手が少なく、みな優等生タイプでおとなしい。白星を重ねているときは問題ないのですが、チームが停滞しているときに声を張り上げ、ナインを鼓舞する選手がいない。そういう選手がいれば空気が変わります。一連のコメントは、もっと勝負への執着心を持ってほしいという岡田監督のメッセージだと思います」
逆転優勝しても勇退の可能性
シーズンは残り1カ月ほど。優勝争いと共に、気になるのは岡田監督の去就だ。頭の回転が速く、66歳という年齢を感じさせないが、就任当初から親しい関係者に「長くやるつもりはない」と明かしている。
スポーツ紙デスクは、
「リーグ連覇を逃したときだけでなく、逆転優勝を飾ったとしても勇退する可能性があります」
と見る。
岡田監督はオリックス時代を含め指揮官10年目の区切りのシーズンになる。最初の阪神監督時代にリーグ優勝1回(05年)、2度目の昨年は日本一を達成した。阪神を常勝軍団にする礎を築いて身を引く、という思いがあるのかもしれない。それだけに、チームに勝利へのこだわりが見られないことが気にかかるのだろう。