ただ、ほうれい線ばかりが老け顔に見せる悪の根源なのかと問われると、そうではないと思っています。姿勢の悪さから歯の噛み合わせの悪さ、食いしばり、加齢による皮膚と筋肉の衰えなどまで要因はたくさんあり、それらが少しずつ積み重なり、からみあって徐々に顔を老けさせています。みなさんには、まずそのことを知ってほしいのです。
私はほうれい線の深さよりも顔の下半分の長さと悪い姿勢のほうが、顔が老けて見えることに大きく関係していると考えています。加齢とともにたるんでのびた鼻の下からあごの下までの顔の下半分と、首が前に出たねこ背や下腹を突き出した姿勢は、一瞬で老けた印象を与えるのは確かです。
マスク生活が老化を早めた
アイメイクをしっかりしていて、若々しく見える女性がマスクをはずしたとき、思っていた以上に高齢に見えて驚いた……という経験、コロナ禍にありませんでしたか?
筋肉は、使わないでいると驚くほどの速さで衰えていきます。よく病気やケガで長期入院したあと、筋力が弱くなって歩けなくなったり、高齢のかたのケースではそのまま寝たきりになったりするのはそのためです。
コロナ禍に始まったマスク生活が終わってから、「急に老けた感じがする」とサロンを訪れる人が急増しました。それもそのはずです。人との会話を控え、会話をしたとしてもマスクをしたままなので口は最小限にしか動かさない、無表情になりがち……と、顔の筋肉を使うことが極端に減ったから。使わない筋肉の筋力は低下し、顔の皮膚や脂肪を支えられなくなり、重力に負けて顔の下半分がたるんで長くなっていったのです。
そして、顔の老化にはスマートフォンも関係していると私は考えています。今では手放せないスマホですが、テレビやパソコンとは違う、首を前に出して背中を丸くした「手もとをのぞきこむ」という姿勢で見ることが問題です。顔の筋肉は首や背中の筋肉とつながっているため、このスマホ姿勢になると顔の筋肉が重力に引っ張られます。また、首の横から上部の肋骨(ろっこつ)までついている斜角筋と、上部の肋骨から肩の前面までついている小胸筋が縮こまってしまい、顔のたるみだけでなく、二重あごや首のシワの原因にもなるのです。