人と機械の融合の勘どころ
20年以上前から、さまざまな「移動用ロボット」の開発に取り組んできた中嶋教授。これからロボットを社会に普及させていくには、「積極的に使いこなしていく姿勢」がかぎになると感じている。
そんな背景もあって、中嶋教授は今大会での出場種目を変更した。新しく採用された種目「視覚支援レース(VIS)」だ。
画像センサーなどを身に着けた視覚障がい者のパイロットは、棚に置かれた特定の商品を見つける、いすが並べられた場所で空席を探す、さまざまな障害物にぶつからずに歩くなど、10の課題をクリアしなければならない。
「そもそもサイバスロンは『人と機械の融合』が大きなテーマですが、これまでに2回出場した電動車いすレースはどちらかといえば、機械(メカニズム)の性能に結果が左右されやすかった。それに対してVISは、人がいかに機械を使いこなせるかという接点(インターフェース)が重要なポイントとなるレースです」
最近、警備や案内、清掃などのロボットを目にする機会が増えた。しかし、日常生活を手助けするロボットを実際に使ってもらえるものにするには、機械としての完成度を上げるだけではダメだという。
「若いときはメカに対する憧れがありました。けれど、研究を進めるうちに、人間の奥深さというか、本当に人間に役立つロボットを作るための勘どころが見えてきた」
それにつながるのが、VISなのだと考えている。
新課題に対応した電動車いす
大阪電気通信大学工学部の鄭聖熹教授が率いるチームは、前回大会に続いて電動車いすの種目に出場する。
出場のきっかけは6年前、東北大学の研究室の仲間だった中嶋教授から「一緒に出ない?」と声をかけられたからだった。
鄭教授のチームの車いすの特徴は小回りがきくことで、日常生活を想定した障害物のある場所でもきびきびと動く。その秘密は、前輪に採用された「オムニホイール」。複数の車輪を組み合わせて1つのタイヤを構成するもので、その場で方向転換ができる。
さらに、独立してパワフルに動く4つの車輪を細かく制御することで、でこぼこ道の課題も難なくクリアする。