今大会では、世界各地から約80チームが参加する。
これまでも日本から複数のチームが参加してきたが、なかでも和歌山大学チームは16年の第1回大会から出場してきた。
「和歌山大のチームが参加してきたことを、とてもうれしく思います。コロナ禍を経て、チューリヒでお会いできることを楽しみにしています」
大きな盛り上がりに感動
和歌山大学システム工学部の中嶋秀朗教授らのチームは、8年前に初開催されたサイバスロンの電動車いすレースに出場した。
大会には25カ国から66人のパイロットが出場し、約4600人が観戦。競技者がゴールするたびに、観客席から大きな歓声が湧き上がった。想像を超える盛り上がりに、中嶋教授は感銘を受けたという。
サイバスロンは一見すると最新テクノロジーを競い合う「機械対機械」のバトルのようにも見えるが、そうではないという。
「人と人が競い合うので、観客は競技者に感情移入できるし、共感できる」
と、中嶋教授は語る。
同じ障がい者スポーツでも、パラリンピックは基本的に速さや強さを競うものだが、バイアスロンの醍醐味は別のところにあるという。
会場の観覧者はまず、自分たちが日常生活のなかで簡単にこなしてしまうことが、障がい者にとっては「障害」「困難」になっていることに気づく。そして、テクノロジーが障害を克服するのにどう貢献するのかを目の当たりにするのだ。
「障がい者の選手の動きにスピード感はありませんが、観客はこれまで日常生活でできなかったことができるようになるのを目にする。それに充実感を覚えて感動を呼ぶのだと思います」(中嶋教授)
和歌山大のチームは、段差や傾斜がある路面の状態をセンサーで検知し、パイロットが座ったシートを水平に保ちながら進む電動車いすを開発。北京パラリンピックの車いす陸上で、2つの金メダルを獲得した伊藤智也選手がパイロットを務め、4位の成績を収めた。
ただ、電動車いすとしての完成度は高かったものの、海外チームと比べて、速度に対する貪欲さに欠けていたと感じた。それは、日本と海外の福祉機器に対する考え方の違いでもあった。
「日本人は安心安全な機械を完璧に作って、使う人はそれに『おまかせする』という考え方です。ところが、外国の人は多少機械の完成度が低くても、それを『コントロール』して使いこなしていく意識が強いように感じました」