■借金して献金重ねた
1990年代になると、霊感商法から物が介在しない「献金」に変わった。ただ、井田さんの父親(70代)が旧統一教会に強く反対していたため、専業主婦だった母親は、消費者金融や別の信者からも借金をしてお金を工面し、献金を重ねた。しかし、次第に献金の「圧」に耐えられなくなり、2012年、教祖の文鮮明が死亡する頃に脱会した。いまは実家で父親と暮らしているという。
井田さんによれば、母親は当時のことは何も話そうとしない。ただ、物品購入と献金とで、少なくとも総額500万円は使っている。同時に、母親も他人に壺などを売る側になっていたはず。母親の借金はすべて返し終えたが、その一部を井田さんがローンを組んで返済した。
井田さんは、母親が自分も含め周りの人も巻き込んでしまったことを、しっかり反省してほしいという。そして、こう話す。
「私が一番許せないのは、子どもを守るため、家族を守るためという母の気持ちにつけ入った旧統一教会です。宗教は人を救うためのもの。それなのに正常な判断ができない状態にまで追い詰め、物を買わせ多額の献金をさせたことに、強い怒りを覚えます」
(編集部・野村昌二)
※AERA 2023年1月16日号