働けど働けど、住まいがどうにも高すぎる――。現代人にとって、マイホームは高嶺の花になりつつある。高騰する住宅価格に悩む現代人を追う連載の3回目は、中間層の都内から去るという選択について。
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都内で賃貸住まい、手が届く物件がない
「東京のマンションは高すぎて無理。都内で買うのは諦めました」
こう話すのは、自営業の夫と5歳の息子とともに、都内の賃貸マンションで暮らす専業主婦のB子さん(38)だ。子どもが小学校に上がるタイミングでマンションを買おうと、数年前から物件をリサーチしているが、手が届く物件がなかなかない。
新築マンションはあまりの高さにとうに諦めた。探しているのは築浅のファミリータイプの中古マンションだが、中古であっても年々価格が上昇し、1億円を超える物件も少なくない。比較的手頃で「いいかも」と思った物件は、あっという間に売れてしまう。中古マンション争奪戦も熾烈だ。考えることはみな同じということか。
5千万円なら都内より近隣県
B子さん夫婦が借入額をシミュレーションしてはじき出した予算は5千万円。頑張っても6千万円が限界だ。価格上昇とともに都内の“買えないエリア”が広がり、現在は都外も含めて探している。
「賃貸マンションだと、都内の利便性のなかなか高いエリアに住めたけど、購入となると買えるエリアがかなり限られます。夫は都心で働いていて、できれば近くで物件を探したかったのですが、あまりに高くてとても無理。通勤の問題さえクリアすれば、近隣県で探したほうが、都内よりいい条件の物件に住めるかなと思っています」(B子さん)
都内の新築マンションの価格は1億円超も珍しくなくなったが、中古マンションも、値上がり傾向が続く。不動産調査会社の東京カンテイが発表した、今年6月の中古マンション平均希望売り出し価格は、東京都心6区(千代田、中央、港、新宿、文京、渋谷)が70平方メートル当たり1億2058万円だった。前月と比べ1.1%高く、最高値を17 カ月連続で更新した。
不動産の傾向を長年調査している、東京カンテイの井出武さんは言う。