情報が情報を呼ぶ。

 情報は情報を誘導する。

 このことは本書がたいそう重視していることだ。「情報は孤立していない」、あるいは「情報はひとりでいられない」ともいえるだろう。また、「情報は行先をもっている」というふうに考えてもよいかもしれない。

 情報が情報を誘導するということは、その誘導にはおそらく柔らかい道筋のようなものがあるかもしれないということだ。また情報に行先があるのなら、その行先をうまく予測しさえすれば、あらかじめ単語や概念のネットワークをつくっておくこともできるということだ。

 もしそうだとすれば、〈単語の目録〉をいちいち〈イメージの辞書〉に対応させずとも、〈単語の目録〉の内部だけでも一定の連環をもてるようになる。単語と単語がリンクを張りあって、それだけでも連鎖してくるのだ。これは、〈単語の目録〉が内部構造をもったというふうに考えることができる。単語リストがそれぞれ樹木状につながり、リストからリストへ移動する指示セットが用意できたからである(このことを専門的には「有限状態モデル」とか「マルコフ・モデル」という)。

 連想ゲームは、このようなことを私たちに示唆してくれる。

 かくて私たちは、連想ゲームなどの遊びをとおして、〈編集的状態〉というものがどういうものかということを知っていく。情報の連鎖の中にいかに入っていくかということ、そこにこそ編集の秘密が待っている。

著者プロフィールを見る
松岡正剛

松岡正剛

1944年、京都府生まれ。早稲田大学文学部中退。オブジェマガジン「遊」編集長、東京大学客員教授、帝塚山学院大学教授などを経て、現在、編集工学研究所所長、イシス編集学校校長、角川武蔵野ミュージアム館長。80年代「編集工学」を創始し、日本文化、経済文化、物語文化、自然科学、生命科学、宇宙、デザイン、意匠図像、文字などの諸分野をまたいで関係性をつなぐ研究に従事。その成果を、様々な企画、編集、クリエイティブに展開。一方、日本文化研究の第一人者として私塾を多数開催。

松岡正剛の記事一覧はこちら
暮らしとモノ班 for promotion
夏の夜は不眠になりがち!睡眠の質を高めるための方法と実際に使ってよかったグッズを紹介