いずれにせよ、遊びこそは編集の先生である。遊びができないかぎり、ほぼ編集はない。編集技術に分け入るには、遊びと編集とがまざった状態に、一度、頭を突っこませてみるのがよい。

 そのことを説明するために、ここでちょっと私が考案したエディトリアル・ゲームを紹介してみたい。私はこれまでに何十種類ものエディトリアル・ゲームをつくってきた。編集の秘密の一端を伝えるためでもあり、多くの遊びが編集的であることを示唆するためでもあった。

 ここで紹介するのは「ミメロギア」という名をつけたエディトリアル・ゲームで、おおよそ次のようにして遊ぶ。

 紙と鉛筆があればできる。何人でもよい。東西か源平か紅白か、二チームに分かれてもよい。

 まず、ディレクターにあたる者が「珈琲と紅茶」「時計とメガネ」「山口百恵と松田聖子」といった、一見似ているようで似ていない一対の用語や、あるいは「馬と竹」「サッカーとジッパー」「トヨタと資生堂」といった、およそ関係のなさそうな一対の用語がランダムに並んでいる紙を配る。

 参加者はこの紙に「午前の珈琲・午後の紅茶」とか「後で笑う百恵・先に笑う聖子」といった、それぞれの対比ができるだけ強調されるような言葉やフレーズを書きこんでいく。たとえば「スイカとメロン」ならば、「卓袱台のスイカ・テーブルのメロン」とか「田舎のスイカ・都市のメロン」とか「おじさんのスイカ・おばさんのメロン」とかというように、だ。

 このゲームは原則としては対比と連想をたのしむゲームである。その強調の仕方では笑いころげることもあるし、しらけることもある。

 情報というものは一対の対比の中に入れてみると、そのイメージサークルの見当がつくことが多い。「山口百恵と松田聖子」「馬と竹」「トヨタと資生堂」という一対のイメージは、すでにわれわれにタイトルやヘッドラインが示す情報の行先をたくみに誘導するのである。さらに〈単語の目録〉と〈イメージの辞書〉を思わず知らずダイナミックにつかうきっかけをつくるのだ。

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評価が自発してくるところがおもしろい