AERAの連載「午後3時のしいたけ.相談室」では、話題の占い師であり作家のしいたけ.さんが読者からの相談に回答。しいたけ.さんの独特な語り口でアドバイスをお届けします。
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Q:長年勤めてきた会社をこの夏に定年退職します。仕事が忙しかったこともあり、退職後の身の振り方がまったく決まっていません。単身ですし、金銭的にはあえて働く必要はありませんが、このままダラダラ過ごして人生が終わってしまうのもちょっと寂しい気がします。今後の身の振り方について、どこからどんなふうに考えていけばいいでしょうか?(女性/会社員/64歳/かに座)
A:定年退職まで、長らくお仕事本当にお疲れ様でした。
仕事というものは多くの人にとって、のびのびとした自分を出せる場所ではないように思います。締め切りがあったり、ノルマがあったり、周りの人との人間関係があったり。そして大きな責任も発生します。
もちろん合間に雑談するとか、のびのびできる瞬間もあるけど、基本的には仕事に就いている間はピリピリしていなければいけない。仕事に合わせた自分をずっと作り続けていなければいけない、という点で、やはり仕事ってとても特殊です。
退職することでやっと仕事から解放される、その喜びと不安が同時に訪れている最中かと思います。
人って、いざやりたかったことをやれるタイミングが来ても、案外やりたいことが思い出せなかったりします。
だからみなさんにオススメしたいのが、半年に1回ぐらい、自分がやりたいことを10個ぐらい適当に書いておくこと。川下りしたいとかなんでもいいです。
やりたいことを探そうとしても、「今そんなことしてる場合じゃないもんな」という頭の中の自分の声が、ブロックになってしまうことがあります。例えば「田舎に2泊3日ぐらいで泊まって、朝に新鮮なブルーベリージュースを飲みたい」と思っても、「そんなことしてる場合か?」というツッコミが入ってしまう。そうすると次が思い浮かんでこないから、コツとしては、「半年後ぐらいに落ち着いたときにやりたいこと」を思い浮かべてみてください。結構すんなりやりたいことが浮かんでくると思います。
もしかするともう一度お仕事を探されるかもしれませんが、せっかく一度解放されるタイミングですから、価値観を変えてから、仕事を探す活動を始めてもいいんじゃないかなと思います。空ってこんなに広かったんだ、ということに気づくのも立派な発見だし、価値観の転換になるのではないでしょうか。
かに座は、意外と集団から外れてもうまくやっていける人が多いです。他人をそこまで必要としないというか。家族とか大好きな人のことは信用して甘えるんだけど、その他大勢の人や他人からの評価を、あまり必要としません。
そのため「それでいいのか、私」「友だちってなんだろう」みたいな悩みが出てきやすいですが、それで何の問題もありません。一人で誰にも気兼ねせず解放される時間を、このタイミングでぜひ満喫していただきたいと思います。
※AERA 2024年8月26日号