フェンシング女子サーブル団体日本代表(写真:代表撮影/JMPA)
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 数多くのドラマが生まれたパリ五輪。フェンシングと体操は、日本勢のメダルラッシュに沸いた。AERA 2024年8月26日号より。

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 かつてない快挙に沸き、躍進を印象づけたのはフェンシング。武士道の国が、騎士道の国で旋風を巻き起こした。

 男子エペ個人で解説に「ジェット機みたいなスピード」と称された加納虹輝が金メダルに輝くと、女子フルーレ団体(東晟良、上野優佳、宮脇花綸、菊池小巻)が3位決定戦に勝利し、女子選手として初めてメダルを獲得。勢いはとどまることを知らず、翌日には男子エペ団体(加納、見延和靖、山田優、古俣聖)が銀メダル。その翌日には女子サーブル団体(江村美咲、高嶋理紗、福島史帆実、尾崎世梨)が銅メダルをもぎ取った。江村は世界選手権個人で2連覇しており、個人戦でも金メダルが期待されていたが、3回戦で敗退していた。団体戦終了後、

「仲間が粘り強く、どんなに私が点を取られても、取り返してきてくれた」

「不安だったけど、形から入ろうと笑顔を作った。本当は怖かった」

 と語った。仲間に背中を押され、絆で勝ち取ったメダルだった。

けが乗り越えての金

 フェンシングの快進撃はここでも止まらず、締めくくりは男子フルーレ団体。松山恭助、飯村一輝、敷根崇裕、永野雄大の4人が決勝でイタリアを破って初めての金メダル。日本は出場した団体種目のすべてでメダルを獲得した。

 体操日本の活躍も男子団体だけでは終わらなかった。

 大逆転でつかんだ男子団体金メダルの余韻冷めやらぬ7月31日、個人総合で岡慎之助が新王者に輝いた。2年前に負った右膝前十字靱帯断裂の大けがを乗り越えての金メダル。岡は5日の種目別・鉄棒でも優勝し、団体と合わせて金メダル三つを獲得した。

 離れ技でも膝が割れず、ピンとつま先まで伸びた足。ミスのない安定感ある演技。まさに「きれいな体操」を見せつけ、レジェンドの内村航平、東京五輪の金メダリスト・橋本大輝に次ぐ、新エースの誕生だ。

「奇跡ですね」

 インタビューで微笑みながら感想を語る姿は初々しかったが、新たな時代の到来を感じさせた。(編集部・秦正理)

フェンシング男子エペ団体日本代表(写真:代表撮影/JMPA)

AERA 2024年8月26日号より抜粋

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秦正理

秦正理

ニュース週刊誌「AERA」記者。増刊「甲子園」の編集を週刊朝日時代から長年担当中。高校野球、バスケットボール、五輪など、スポーツを中心に増刊の編集にも携わっています。

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