AERA 2024年8月26日号より

「人食いバクテリア」

 だが“劇症型”とつくと様相が変わってくる。「中部国際医療センター」(岐阜県)の杉山温人病院長が説明する。

「子供ではなく、大人に多い。最初こそ普通の風邪、普通の咽頭炎のようですが、急速に症状が悪化します。傷口から溶連菌が侵入した場合、ほんの小さな傷だったのが、ひどい痛みと腫れが生じ、高熱と意識障害が表れ、筋肉の壊死が起こり、肝臓や腎臓などの臓器が機能しなくなる。人によっては、これらの進行が24~48時間ということもあります」

 致死率は30%。発症後数十時間で最悪の事態を迎えることもあることから、「人食いバクテリア」という異名もある。

「同じ溶連菌ですが、一方では感染しても無症状や咽頭炎の程度なのに、一方ではなぜ死に至るリスクのある劇症型溶連菌感染症を起こすのか。その理由ははっきりわかっていません」(杉山病院長)

 手足口病の感染者数も過去10年で最多だ。例年は夏に流行するが、今シーズンはそれより早い5月中旬ごろから感染者数が全国的に増加している。

 エンテロウイルス属のウイルスによって引き起こされる感染症で、5歳以下の乳幼児を中心に夏に流行する。口の中、手のひら、足の裏などに2~3ミリの水疱性の発疹ができ、発熱、食欲不振、喉の痛みなどの症状がある。まれに合併症として髄膜炎や脳炎を起こすことがあるが、比較的軽症で済む病気と考えていいだろう。

 ただ、手足口病の流行は、親にとっては深刻だ。

「岡山県の幼稚園で手足口病で学級閉鎖となったというニュースをネットで見て、うちの子の保育園はどうかと不安で」と言うのは、神奈川県在住の女性。

 7月9日、同県倉敷市の幼稚園の満4歳児クラスに通う17人中6人が手足口病や発熱・発疹などを訴え欠席。倉敷市は10日、学校保健安全法に基づいて、このクラスを学級閉鎖にした。

 手足口病はワクチンはなく、特別な治療法はない。症状が消えてもウイルスが長期にわたって排泄されることがある。手足口病に罹患した際の登園については、園によって独自ルールが決められている場合もある。

「うちの子の保育園は、手足口病でも発熱や喉の痛み、下痢がなく、普段の食事ができるなら登園はOK。ただ、現時点でも発疹のたびに園から呼び出され仕事を抜け出さなければならないのが大変。これで学級閉鎖になったりしたら、どうすれば」(前出の神奈川県在住の女性)

 他にも今夏、例年は冬に流行するインフルエンザ感染者も増えている。また、昨年は夏に子供たちの間で流行する咽頭結膜熱が冬になっても流行。「7週連続過去10年間で最多の状況(国立感染症研究所から、12月3日までの1週間の患者数)」という報道もあった。(ライター・羽根田真智)

AERA 2024年8月26日号より抜粋

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