「同じ左投手でも、字を書いたり箸を使う際に利き手が右か左かでも大きく変わる。普通に投げて自然にシュート回転するクセ球も個々で曲がりや球質が異なる。(左腕は)個性が豊かな傾向もあり、そういった投手への対策は難しい」(NPB在京球団スカウト)

 今春から導入された低反発バットが高校野球の質を変え始めたのは間違いないだろう。これまで夏の甲子園は打撃力なくしては勝ち上がることはできないと言われていたが、打撃技術とともに支えとなっていたのが高反発バットの存在だ。

「各野球メーカーは高反発バット開発に全力を注いできた。多少の打ち損じでも強い打球を生み出して結果に繋がった。しかし新規定のバットでは反発力が抑えられ投手有利の状況になった。左投手がより実力を発揮しやすくなったと言える」(高校野球に詳しいスポーツライター)

 これまでは打者が“力”で押し切れた部分もあったが、今のバットではそうはいかなくなった。各学校は新たな環境の中で勝つ方法を模索する必要が出てきたが、その一つのカギとなりそうなのが左腕になりそうだ。

「酷暑対策を含め、高校野球は新時代に突入している。試合では左投手を重宝する傾向は今後どんどん波及するはず。来春以降の甲子園出場校はさらに左腕が増えるのではないか」(高校野球に詳しいスポーツライター)

 かつては右の本格派投手が主流だった時期もあった。高い技術と高反発バットに対しては力で対抗する投手が多かったからだ。しかし、これからは今大会で見えた傾向を鑑み、左腕投手がどんどん重宝されそうな雰囲気もある。この後に行われる準決勝、決勝でも新たな時代を迎えた高校野球のトレンドとなりそうな左腕の投球に注目したい。