2024年、夏。今年も甲子園で高校球児たちの熱戦が繰り広げられている。第106回全国高校野球選手権大会の名シーン、名勝負を振り返る。今回は、8月16日の広陵(広島)-東海大相模(神奈川)について。

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東海大相模の藤田琉生投手(撮影/写真映像部・松永卓也)
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 対峙する多くの打者にとって、その高さはなかなかお目にかからないものだろう。甲子園史上最長身のピッチャーである東海大相模の藤田琉生。

 198㎝の左腕が、広陵打線の前にも立ちはだかった。

「相手の打者は、この高さを見たことがなかったと思う」

東海大相模・和田(撮影/写真映像部・松永卓也)

 13三振を奪った富山商との初戦を終えた藤田は、自身のピッチングをそう振り返ったものだ。高身長を生かして角度をつけたストレート。ただ、初戦でも見せたように「狙われる」ストレートの割合を減らして、効果的に変化球を散りばめるピッチングが広陵戦でも冴えた。

 藤田のストレートが上ずり、2つの四球と右前安打、さらにバッテリーミスが重なって先制点を許したのは2回裏だ。だが、失点はその1点のみ。6イニングスを投げて被安打2の姿に、エースの意地を見た。東海大相模の捕手・木村海達は言う。

「藤田は器用で、変化球でカウントを整えられる。今日は、守備にも助けてもらいながら打たせて取ることができた」

東海大相模・中村(撮影/写真映像部・松永卓也)

 昨秋までの左腕は、気持ちが切れることが多かった。だが、「今は粘り強く投げてくれている」とも言い、主将でもある木村は藤田に信頼を寄せるのだ。

 広陵の6番に座った土居湊大にとって、藤田の“高さ”は脅威ではなかった。

「イメージしていたよりも角度を感じなかった」

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藤田対策は徹底