華々しくデビューを飾った者に、雌伏の時を過ごす者。甲子園の土を踏んだ経験も糧にして、“ドラ1”たちはそれぞれに充実のルーキーイヤーを送っている。AERA増刊「甲子園2024」の記事を紹介する。

【写真】甲子園でプレーする高校時代の度会隆輝選手

度会隆輝選手(横浜DeNAベイスターズ)(撮影/写真映像部・東川哲也)
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 6月21日の阪神戦で、度会隆輝は3本の左前安打を放った。自身にとっては高校以来となる甲子園球場だ。「特別な場所」のカクテル光線を浴びて躍動するプロ1年目の姿がまぶしかった。

高校野球とはまた違った感じで、すごく新鮮な気持ちでした」

 多くの高校球児がそうであるように、神奈川の名門・横浜時代の度会にとっても甲子園は憧れの場所だった。「出場したい」と願った聖地の土を初めて踏んだのは1年夏。100回目を迎えた記念大会だった。背番号14の度会は、愛産大三河(東愛知)との1回戦で甲子園のデビューを飾る。7点リードの九回表に代打で登場したスーパー1年生は右前安打を放った。

「甲子園での最初の打席でヒットを打てたことが一番の思い出ですね。あの打席はワクワクして楽しかった」

 金足農(秋田)との3回戦でも、1点を勝ち越してなおも攻め続ける六回表に代打で出場した。マウンドには吉田輝星(現・オリックス)だ。初球から果敢にバットを振ったが、三球三振に倒れた。試合も、のちに準優勝を果たすことになる金足農に1点差で敗れて悔しさを味わう。それでも、度会は吉田との対戦を「鮮明に覚えています」と振り返り、こう続けるのだ。

「吉田投手と対戦できて楽しかった」

 度会にとって2年春の選抜大会(1回戦敗退)が高校最後の甲子園となったが、1年夏も含めて特別な場所でプレーできたことは大きな経験値として残っているようだ。

「貴重な体験ができたと思っていますし、甲子園でプレーできたことはうれしい思い出。高校時代のあの経験が、今に生きているんじゃないかなと思っています」

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天賦の才とも言える打撃