カツオノエボシ(提供:沖縄県衛生環境研究所)
カツオノエボシ(提供:沖縄県衛生環境研究所)

 沖縄の海の家や売店では、ハブクラゲ対策のため、酢を常備しているところが多い。この時も酢を分けてもらったが、本当はNGだ。カツオノエボシに酢を使うと、逆に刺胞を活性化させる可能性があるからだ。真水、アルコールも刺胞を刺激してしまうことがある。

 カツオノエボシや、やはり刺胞毒の強いアカクラゲに刺された場合は、海水で触手を洗い流すことが重要だ。症状は刺傷箇所が腫れ、水ぶくれのようになるほか、アナフィラキシーショックを引き起こすこともある。

 日本自然保護協会保護・教育部の大野正人部長がこう語る。

「今年はカツオノエボシが、相模湾沿岸に数多く漂着しているようです。浜辺に打ち上げられて死んだものも触ってはいけません。クラゲに刺されないためには、ウェットスーツやラッシュガードを着て肌を出さないことです。ホームセンターに行けば、子ども用のラッシュガードも売られています」

 ヒョウモンダコは、日本では房総半島以南に生息する。体長10センチほどの小さなタコで、興奮すると青いリング状の模様が浮かび上がる。ヒョウモンダコの唾液にはフグと同じ猛毒のテトロドトキシンが含まれ、咬むことで毒を注入する。タイドプール(潮だまり)などで見つけて「かわいい」と思っても、絶対に触ってはいけない。

ヒョウモンダコ(提供:沖縄県衛生環境研究所)
ヒョウモンダコ(提供:沖縄県衛生環境研究所)

 咬まれた場合は、すぐに病院で治療を受ける必要がある。

 危険生物のリスクマネジメントを専門とする「一般社団法人・セルズ環境デザイン教育研究所」の西海太介代表理事が注意を促す。

「咬まれて数分もすると、痺れやめまい、言語障害を引き起こします。1時間半程度で死亡した例もあります。遊泳中は体が麻痺して溺れてしまう恐れがあるので一刻も早く陸に上がり、救急車を呼ばなければならない。そもそもタコの仲間は貝殻を噛み砕いて捕食するものもいるので、毒がなくても咬まれると大変危険です。基本的にタコを素手で触らないことです」

 地球温暖化の影響からか、近年では東北の三陸海岸あたりでも見つかることもあるという。

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マリンシューズの底も貫通するほどの鋭いトゲ