パリ五輪スケートボード女子ストリートで金メダルを獲得した吉沢恋(ここ)選手が小学生のときから通ってきた「小山公園ニュースポーツ広場」=神奈川県相模原市、米倉昭仁撮影

スケボーがコミュニケーションツール

「スケボーをしていると、周囲のスケーターから、『おお、うめえじゃん』とか『惜しい』とか、自然と声がかかる。たとえば、ひきこもりだったり知的障害があったりしてうまく言葉が出なくても、スケボー自体がコミュニケーションツールだから、誰も気にしない。でも、声をかけられたほうはうれしいから、またやってくる。いつの間にかコミュニケーションもとれるようになるんです」

 スケボー仲間のコニュニティーは「安心できる居場所」であり、やがてそれは「人生のルーツ」になる。小学生のころからスケボーに「どっぷりはまってきた」河崎さんは、そう信じている。

「家庭がひとり親でも、勉強ができなくても、いじめられていても、スケボーの世界では関係ない。『スケボーだけは誰にも負けたくない。一生懸命にやってきた』という気持ちが人生の支えになるんです」

パリ五輪スケートボード女子ストリートで金メダルを獲得した吉沢恋(ここ)選手が小学生のときから練習してきた「小山公園ニュースポーツ広場」=神奈川県相模原市、米倉昭仁撮影

「うるさいやつらがいる」と苦情

 だが、スケートボードは難しい。自在に滑るためには、百回も千回も練習しなければならない。練習するには場所がいる。もともとスケボーは、街なかの構造物を工夫して滑り、楽しむものだったこともあり、駅前の広場や階段、道路、公園などが練習場所になる。こうした公共の場でのスケボーの練習には、苦情が寄せられることも珍しくない。

 以前、記者が訪れたリニューアルが進むJR新潟駅の南口広場周辺もそうだった。

「ゴー」。夜、8時すぎ。スケボーを走らせながら3人の若い男性が現れた。「ガラガラー、ゴトン」。勢いをつけてベンチの上に飛び乗り、着地する。そのたびに大きな音がする。目立つところに「スケボー禁止」のポスターがあるが、気にする様子はない。滑走は夜中まで続いた。

五輪以降に苦情や通報増えた

 スケボーに関係する新潟警察署への苦情や通報が増えたのは東京五輪以降だ。滑走や落下で騒音が発生する。広場の石畳はひび割れ、ベンチは傷つく。通行人の妨げになったり、あわや衝突事故になりそうなときも。夏から秋にかけては通報が100件を超える月もある。昨年は1472件の通報があった。

 住民からの苦情を受けた新潟市は今年4月から新潟駅周辺でスケボーを禁止する条例を施行した。同様の条例は北海道札幌市、茨城県水戸市、大阪市、本市など各地にある。

 スケートパークの設置は、こうした苦情を解決することにもつながるという。

若者でにぎわうスケートパーク=千葉県浦安市、米倉昭仁撮影
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東京五輪以降に苦情や通報が増加