ただし、「重要なのは、どんな施設を設置するのか、スケボーをやる人たちの声を吸い上げること。苦情をなくすため、スケーターを隔離するだけの入れ物になってしまっては、意味がない」
近年、施設の数は大きく増えた。しかし、「『スケートパーク』と呼べるような魅力があり、にぎわっている施設は全体の1割くらいしかない」と河崎さんは言う。
「五輪選手の練習場」はつまらない
どんな施設が「いい施設」なのか。河崎さんはスケーターの視点から、意外なことを教えてくれた。
「例えば、『五輪選手の練習場』のような、競技に特化した施設を作ろうとする自治体も多いんです。けれども、そんな施設に人は来ません。『道場』みたいなところで滑っても楽しくないですから」
そもそも、スケボーは、他者の評価を目的に滑るものではないのだという。
「五輪の競技に採用されて、どのくらい技が『キレているか』とか、どれだけ高く飛んだか、評価基準が定められましたが、それは競技に限ったこと。スケボーは『勝つか、負けるか』ではなく、『自分の滑りのスタイル』を目指すもの。そこに評価基準はないし、新しい技が無限に生まれてくるんです」
「ぼくらは仲間だから」
また、求められるスケートパークのかたちは、地域ごとのスケボーコミュニティーによってまったく違うという。しかし、スケボーの楽しみ方も、地域ごとの楽しみ方も、自治体の担当者はまず知らない。行政とスケーターとの接点はなかなかないからだ。
「自治体からスケートパーク作りを依頼されたら、その地域に足を運んで、一緒に滑ります。『今度、自治体が施設を作ろうとしているんだけど、話しに来てよ』と、ベテランから初心者まで、さまざまな人に声をかけます。すると、来てくれるんです。ぼくらは仲間だから」
相手を知らないから怖い
自治体と住民、スケボーをする人たちが膝を突き合わせて話し合い、信頼関係を築くことも大切だという。
「直接会ってもらい、『話してみると全然怖くないでしょ』と、住民に知ってもらう。相手を知らないから怖いこともあると思うんです」
信頼関係が築ければ、スケートパークを訪れる際に「道路をスケボーで走行しない」などの往来のルールなどもつくることができる。
「ストリートよりも楽しいと感じられるスケートパークが増えれば、迷惑行為やトラブルは自然に減ると思います」
(AERA dot.編集部・米倉昭仁)