AERA 2024年7月8日号より

「周囲に聞こえない程度のため息で自分をコントロールする分には問題ないですし、周囲に誤解されない場所やシチュエーションでつくため息もセーフです。周囲に聞こえたとしても、怒っていたり機嫌が悪いわけではないと周りにわかってもらえるため息なら問題ないでしょう」

 いまのため息、ちょっと大きかったかな。自分でそう気づいたときの対処法としては、笑顔で周囲に話しかけるなど、「怒ってない感じ」を理解してもらう言動でカバーすることを心掛けるといいと言う。

「一方でため息をつかれた側は、ついた人のため息が自分を落ち着かせるためのものか、こちらに何か言いたそうなものか、見極めることが大事です。後者の場合、もし可能なら理由を聞いてみる。理由がわかればされた側の精神的負担も減るでしょう。

 ため息にそこまでする必要があるのか。そう思う人もいるだろう。しかし村嵜さんは、ため息から受けるダメージは想像以上に大きい、と指摘する。

「上司のため息はやはり気になるし、何が原因なのかも聞きにくい。毎日繰り返されるとけっこうしんどいです。極論するなら、一回暴言を吐かれるよりも継続性をもってチクチクとやられるため息の方が、ダメージは大きいかもしれません」

 ため息による負の側面。心理学者で京都橘大学教授の上北朋子さんも、「ため息によって相手が精神的苦痛を感じる」ことには一理あると話す。

「人間は社会性が高いので、人の感情を推測したり、自分は経験していなくても人の感情から自分も同じような経験をしている感覚になる『情動伝染』が起きます。不機嫌や不快感からくるため息の場合、受け取った人が同じようにネガティブな気持ちになることはじゅうぶん起こりうると思います」

(編集部・小長光哲郎)

AERA 2024年7月8日号より抜粋

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小長光哲郎

小長光哲郎

ライター/AERA編集部 1966年、福岡県北九州市生まれ。月刊誌などの編集者を経て、2019年よりAERA編集部

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