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 8月もまもなく終わります。最近「AERA dot.」で掲載された記事のなかで、特に読まれたものを「見逃し配信」としてお届けします(この記事は7月4日に「AERA dot.」で掲載されたものの再配信です。年齢や肩書などは当時のもの)。

【要確認!】あなたもやってませんか?こんな「ため息」がフキハラに…

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 直接的な言葉ではなく、表情や態度によって相手に精神的苦痛を与える「不機嫌ハラスメント」。やられた側が受けるダメージは想像以上に大きいという。やる側にならないために注意すべきことは何か。AERA 2024年7月8日号より。
 

 指示されていた会議用の書類。苦労してまとめた部下は、チェックしてもらうために上司の席へ。一読した上司は何も言わずただ、深いため息をつく。

「はぁ~……」

 これ、やられた側の部下の心情は察するに余りある。〈なんだこの書類、ったくいつまでたっても使えないやつだな……〉という上司の心の声が聞こえる気も。でもそれがハラスメントにあたると聞くと、「え、ため息が?」と意外に感じる人も多いのではないか。

「表情やため息、態度で相手に精神的苦痛を与える行為である『不機嫌ハラスメント』(フキハラ)にあたります」

 こう話すのは日本ハラスメント協会代表理事の村嵜要さん。この表情、態度とはどんなものなのか。

「たとえば黙ったまま相手をにらんだり、口元をムッとさせたり、話を聞いている途中に急に腕を組み出したり、座った姿勢でふんぞり返ったり。そういった表情や態度、ため息などが相手に威圧感や精神的苦痛を与えると総合的に判断できれば、フキハラになります。たとえば大きなため息が明らかに特定の相手に向けられている場合などは、単発でもフキハラが成立します」

パワハラ対策による二次的なものとして

 フキハラの相談件数はここ数年で増加傾向にある。なぜか。村嵜さんは理由の一つとして2020年から施行されたパワハラ防止法があると見る。

「上司たちも本当は言いたいことを我慢したり、言葉遣いに気をつけたりするようになった。でも我慢することで結果的に表情や態度に出てしまっている面はあると思います。パワハラ対策による二次的なものとも言えるんです」

 フキハラの相談で代表的なものがため息で、さまざまなパターンがある。もちろん「ため息はつかないと生きていけません。すべてが悪いわけではない」と村嵜さんは言う。では「セーフなため息」と「NGなため息」、境界線はどこか。

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小長光哲郎

小長光哲郎

ライター/AERA編集部 1966年、福岡県北九州市生まれ。月刊誌などの編集者を経て、2019年よりAERA編集部

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