日本でも2008~2010年にテフロンを製造する静岡市清水区の工場で、製造に関わる職員の血清中のPFOA(PFASの一種)が、アメリカで訴訟が起きたレベルよりもずっと高い数値で検出されていたと、2023年にわかった。つい先日も、大阪府摂津市の地下水からPFASが検出され、汚染源とされているダイキン工業周辺の住人と元従業員らの血液検査をしたところ、アメリカが定める基準値の30倍の値を示した元従業員がいたことが報道された。決して「他の国のこと」ではないにもかかわらず、日本では驚くほどPFASのことが知られていないのが現実だ。
というわけで、両親の喧嘩である。
私の両親が暮らす地域(千葉県柏市です)の井戸水から、国が定める基準値の30倍の濃度のPFASが検出されたのだ。自衛隊の下総航空基地周辺の水路が主に汚染されていることから、原因究明のために自衛隊に調査も入った。幸いPFASが検出された川は水道水には利用されていないのだけれど、問題はこのあたりは水がきれいだと信じられていて、井戸水を利用している世帯が少なくないことだ。行政の調査では、となりの鎌ヶ谷市で基準値の240倍の濃度のPFASが検出された井戸水もあった。そしてお察しの通り、私の実家も井戸水組である。きれいな水で子ども(←私)を育てたいという母の強い意思で、30メートル以上も掘った井戸の水を飲み水に、料理に、生活水として使ってきた。その水が汚染されている(汚染されていた)かもしれない、というのが喧嘩の発端だった。
なぜ喧嘩になったかといえば、PFASの値を知った父が「これからは井戸水を飲まないほうがいい」と母に伝えたことからはじまる。急にその話をされた母は、まず怒りを父に向けた。