母「うるさい! ネガティブなことばかり言わないでよ!」

父「ネガティブじゃない、現実なんだよ」

母「なによ、PFASって。私はここに引っ越してくる時、浄水場に行って調べたのよ。汚くて驚いた。だからわざわざ井戸を掘ったの。掘った人も、すごくきれいな水だって見せてくれた。あなた、その時、何もしなかったじゃないの!(父が家のことは何もせず全て母に丸投げであるという問題に発展)」(そうなるよね、と私は下を向く)

父「はぁー、そういう話じゃなくて」

母「だいたい、自衛隊なんてすごく遠いところにあるんだから、ここまで来ないでしょ」

父「そういう態度が不思議だよ。オーガニックにこだわって、生協で買い物をして、口に入るものにこだわってきたのに、なぜ理解しないのか」(そうだよね、と私は頷く)

母「うるさい。もし井戸水が汚れているって思うなら、自衛隊の前や柏市役所の前に行って、プラカードでも持って反対運動でもしなさいよ。そんなことをする気もないくせに、文句言わないでよ」(なるほど、と私は肯く)

 母は本気で怒っていた。怒るべき相手は父親ではないはずなのだが、現実を受け入れるのは難しかった。そして母は驚くベき行動に出た。なんと母は私と父の前で思い切り蛇口をひねり、コップに井戸水をいっぱいにし、ごくごくと飲み干したのであった。

 あまりのことに父は言葉を失い「お、おまえ……」と絶句している。私は、こういう首長(←たいていオジサン)をどこかで見た気がする……とやはり絶句したのだが……喧嘩はやめて……PFASで喧嘩はやめて……である。

 でもきっと多分、これから、このような家庭が増えていくのではないか。信じていたものがある日突然、「それはリスクのある水です」と言われる瞬間。混乱と怒りは誰に、どこに、伝えればよいのだろう。

 その後、母と父と私3人でPFASのことをゆっくり調べた。柏市にも電話をした。

 母も急速に理解を深め、共産党の市議会議員(←こういう時に頼りになる)に連絡してみようかと言っている。

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母と父は戦争が終わった年に生まれた