打者として結果を残せなかった根尾

「環境を変えて覚醒した選手もいる」

 その後の根尾の伸び悩みについては、球団の育成方針に疑問を呈する識者の声が見られる。最初は遊撃手での定位置獲得を目指したが、2、3年目は外野でプレー。そして4年目の22年シーズン途中に投手に転向して大きな反響を呼んだ。ポジションを転々としているが、投手でも現時点で未勝利と結果が出ていない。

 他球団のスカウトは、「ポジションがコロコロ変わったのは同情すべき点がありますが、根尾が野手でプレーしていた時に可能性を示せなかったことは事実です。遊撃で京田陽太(現DeNA)、龍空に守備力で劣り、打撃も伸び悩んでいた。外野では強肩が魅力でしたが、岡林勇希に比べると攻守で明らかに落ちる。タラレバで『他球団に入団したら活躍していた』と言えるほど甘い世界ではない」と指摘する。

 6年目のシーズンで、チーム内での立ち位置が微妙になってきた。名古屋のテレビ関係者は、「高校時代に活躍し、かつては世代№1といわれた選手です。素質があることは間違いないが、年を重ねるごとに輝きを失っている。ドラ1の選手が活躍できないことはプロの世界では決して珍しいことではありません。環境を変えたことで覚醒した選手たちもいますし、今後の野球人生を考えると、トレードや現役ドラフトで他球団に移籍したほうが良いかもしれない。中日が根尾の未来をどう考えるかですね」

 鳴かず飛ばずだったドラ1が、トレードを機に素質を開花させたケースはこれまでもある。その代表例が大田泰示(DeNA)だろう。東海大相模のスラッガーとして評価を高め、巨人に08年ドラフト1位で入団。松井秀喜の後継者と期待され、背番号「55」を継承したが、1軍に定着できない。転機となったのは16年オフの日本ハムへのトレードだった。移籍初年度から外野の定位置をつかみ、19年に打率.289、20本塁打、77打点をマーク。20年にはゴールデングラブ賞を受賞した。

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