100年ぶりにパリを舞台に開催されているオリンピック。メダル獲得を期待されながらもまさかの敗戦に涙する選手たちもいた。何が勝敗を分けたのか。AERA 2024年8月12日-19日合併号より。
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パリ・オリンピック序盤、日本はメダル獲得表で首位を走るなど好成績を収めたが(間違いなく、東京大会の「強化の余韻」が原動力になっている)、意外な敗戦も相次いだ。
卓球の混合ダブルスではメダル獲得が期待された張本智和・早田ひな組が初戦で北朝鮮ペアに敗れ、柔道では連覇を狙った阿部詩が2回戦でケルディヨロワ(ウズベキスタン)に衝撃の一本負けを喫した。
未知数の北朝鮮ペア
それだけにとどまらず、52年ぶりのメダル獲得に期待が高まっていた男子バレーボールも初戦でドイツに敗れ、フェンシング女子サーブル個人では世界選手権を連覇し、開会式では日本選手団の旗手を務めた江村美咲が3回戦で敗れてしまった。
いったい、なにが起きたのか? この現象を読み解くひとつの鍵は、情報がオープン化した時代における「秘匿主義」の有効性である。
卓球でいえば、張本・早田組を倒した北朝鮮ペアは結果的に銀メダルを獲得した。実力者だったのである。しかし、大会前は未知数だった。なぜなら、北朝鮮の選手たちは国際大会の出場が少なく、データがなかなか得られないからだ。
過去にも、2016年のリオデジャネイロ大会では石川佳純が初戦で北朝鮮のキム・ソンイに苦杯をなめさせられたように、日本は北朝鮮対策の有効打を見いだせていないが、北朝鮮からすれば、多くの大会に出場している日本の選手たちの分析は可能だ。今回も、事前の公開情報量の差が思わぬ結果につながった。
男子バレーボールでは、ドイツは前哨戦となるネーションズリーグで主力のエースとリベロを起用しなかった。あくまで本番はオリンピック。日本も石川祐希を温存した試合があったが、ドイツの方が秘匿主義は徹底していた。情報戦でいえば、開示度は日本がA、ドイツがB程度だったのではないか。