■ミラノ駐在時の貴重な情報源

<駐在員の妻たちが大事に回覧していた「週刊朝日」>と詠んだのは横浜市の臼井慶子さん(54)。25年ほど前に夫のイタリア・ミラノ赴任に同行した時の思い出を詠んだという。

「当時はインターネットもあまり普及していなかったんです。テレビの日本語放送もほんのわずかで、日本の情報に飢えていました。その頃は和歌山ヒ素カレー事件なんかが大きな話題になっていました。それで、こっちに来るという友達に『お土産に週刊誌とお煎をお願い』って、週刊朝日と週刊文春を買ってきてもらったんです」

 ロンドンに赴任した夫の同僚は市内の古本屋で日本の週刊誌が買えたらしいが、そうした日本の出版物を扱う店は当時のミラノになかったのだ。

「私が通っていた日本語学校には、やはり赴任してきている銀行家の奥様たちがいらっしゃり、週刊朝日を読みたいというんです。お渡ししたら『回覧していい?』って(笑)。皆さん、日本の情報に飢えていらしたんですね」

 臼井さんが短歌を始めたきっかけはNHKで放送していた初心者向けの短歌番組「短歌de胸キュン」を見て。

「出演していたフルーツポンチの村上(健志)さんやスピードワゴンの井戸田(潤)さんが作った歌を見て、こんなに素直に詠んでいいんだと感じたことでした。番組に投稿したら3回くらい採用されたんです。ちょうどその頃、知人から短歌サークルに入ったら?と誘われていたので、加入して詠み始めました。テーマを与えられて詠む“題詠”よりも自由に詠むほうが好きですね」

 このほか<スマホなど無かった時代の情報源「週刊朝日」が休刊するとふ>と詠んだ埼玉県川越市の西村健児さんが入選している。

 選者の一人・歌人の佐佐木幸綱氏は「朝日歌壇は新聞の一部だと考えているので、新しいニュースを詠んだ歌はできるだけすくい取りたいと考えています。2月19日の選評でも書きましたが、この回は週刊朝日休刊を惜しむ歌がたくさん送られていました。その中から厳選して2首を入選にしたんです」と言う。

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