T3編成のドクターイエロー

“幻のヒーロー感”

 こうして登場した初代は「T1編成」と呼ばれ、団子鼻が特徴的な0系新幹線の試験車をベースにつくられた。この時の車体は白。電気関係の点検だけで線路の点検ができなかったため、74年に電気と線路の両方を検測できる「T2編成」が登場した。この頃から車体が黄色になり、「ドクターイエロー」の名で呼ばれるようになったといわれる。79年には3代目の「T3編成」が投入された。同じ0系をベースにしているが、車内の検査設備が新しくなった。

 続いて登場したのが、今回引退が発表された4代目の「T4編成」と5代目の「T5編成」だ。T4はJR東海が01年に、T5はJR西日本が05年に投入した。それぞれ20年に引退した新幹線の700系をベースにしたもので、270キロでの検測が可能になり、営業時間帯のダイヤ設定もたやすくなった。現在はT4とT5の2編成が交互に、約10日に1度のペースで、東京と博多の間を2日間かけて往復している。

 検測専用の車両なので、イベントなどを除いて一般客は乗ることができない。時刻表に載っておらず、いつ走るかも非公開。見たら幸せになると言われ、いつからか「幸せの黄色い新幹線」とも呼ばれるようになったドクターイエロー。遭遇する機会も少ないからこそ高まる“幻のヒーロー感”も人気の理由だろう。

後継なき引退に寂しさ

 昨年8月、静岡県浜松市に住んでいた40代の女性の長男(9)は、東京に住む祖母を訪ねた帰り道、静岡駅で新幹線の通過待ちをしている時に、ドクターイエローが走り抜けていく姿を見た。

 長男はそれまでドクターイエローが見たくて見たくて、入庫していることが多い東海道新幹線の車両基地・浜松工場近くを訪ねたこともあったが、一度も会えていなかった。それだけに「思っていれば叶うんだね!」と大興奮。そんな長男の様子を見た女性はこう話す。

「夢にまで見たドクターイエローと出会えたことは、大切な思い出になっているようです」

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