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大人も子どもも魅了したドクターイエローが引退する。「新幹線のお医者さん」と呼ばれ、「見れば幸せになる」と親しまれてきたが、ここまで愛されてきた理由は何か。そして、引退の背景にあるものは──。AERA 2024年8月5日号より。
【写真】「団子鼻が特徴的な「T3編成」のドクターイエロー」はこちら
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「ドクターイエローは、おじいちゃんになっちゃったの?」
都内の会社員の女性(43)はある日、電車好きの長男(3)からそう聞かれた。通っている保育園で「ドクターイエロー引退」のニュースが話題になっているようだった。
ドクターイエローとは「新幹線のお医者さん」とも呼ばれる検測専用車両のことだ。正式名称は「新幹線電気軌道総合試験車」。7両編成で検測設備を搭載し、東海道・山陽新幹線の東京−博多間(約1100キロ)を最高時速270キロで走りながら、架線の摩耗やレールの歪みなど新幹線の運行に欠かせない設備の異常をミリ単位で発見している。
1964年に初代登場
そんなドクターイエローが引退することが決まった。JR東海は来年1月、JR西日本は2027年をメドにそれぞれ運行を終了すると発表したのだ。冒頭の女性は、こう話す。
「親子ともにドクターイエローを実際に見たことはないですが、出張で新幹線に乗るとついついドクターイエローの弁当箱に入った駅弁を選んでしまいます。このお弁当箱を息子が喜んでくれるだろうな、と思って。息子も私もドクターイエローが大好き。引退は本当に寂しいです」
大人も子どもも大好きなドクターイエロー。その歴史を振り返ってみたい。
新幹線は、1964年に世界で初めて時速200キロを超える営業運転を行う「高速鉄道」として誕生した。これを安全に運行するためには線路(軌道)、架線(電車線)、信号装置などの定期的な状態チェック(検測)と補修が欠かせない。
鉄道ジャーナリストの松本典久さんによれば、新幹線以前の在来線では地上からの目視や計測によってチェックが行われていたという。しかし、列車の高速化や運転本数の増大により効率的な検測体制を築くべく、59年に「マヤ34形」と呼ばれる軌道検測車が開発された、と。
「そして新幹線でもマヤ34形に準じた車両が必要とされ、ドクターイエローが開発されていきました」(松本さん)
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