「ABC」よりおろそかになりやすい「カタカナ」

 1989年9月に東京都目黒区柿の木坂に「モンテッソーリ幼児教室」を開設して以来、30年以上にわたり、日本でモンテッソーリ教育を実践してきた「しののめモンテッソーリ子どもの家」。モンテッソーリ教育では、幼少期に特定のことに対して感受性が敏感になる時期を「敏感期」ととらえ、この時期を正しく利用して子どもの成長につなげることを目指している。文字に対する「敏感期」=言語発達期とされるのが2歳から6歳ごろまでの時期だ。

「しののめモンテッソーリ子どもの家」の三井明子園長と赤塚美希子先生が特に絵本化を望んでいたのは「カタカナ」。子どもたちが文字を習得していく際、抜け落ちてしまいがちなのが「カタカナ」だからだ。

「ひらがな」は多くの家庭で最初に子どもに教える文字。小学校でも最初に習う。英語教育熱の高まりで幼いころから英語教室に通い、「ABC」を学ぶ子も少なくないだろう。しかし「カタカナ」は、日常生活で必要な文字なのに、どちらかというと後回しにされることが多く、「小学校でもあまり丁寧に教わらない」と嘆く保護者もいるという。

 将棋の藤井聡太七王位や英国ウィリアム王子の長男・ジョージ王子が、幼稚園で受けたことでも注目されたモンテッソーリ教育。「すなもじ」シリーズを実際に触ってみると、ざらざらした砂の感触がなんだかくすぐったくて、確かに子どもは喜びそう。楽しくてなぞっているうちに体が覚えてしまう、という感覚が、大人にはちょっとうらやましい。

(構成 生活・文化編集部 上原千穂)