元気でパワフルなかつりかちゃん。撮影後の「写真のNGとかないから」という一言に、「気遣いの人だ!」と感じました(写真/編集部・福井しほ)
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 「会いたい人に会いに行く」は、その名の通り、AERA編集部員が「会いたい人に会いに行く」企画。今週は編集者として働きつつ映画制作をする監督に、記者が会いに行きました。

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「かつりかちゃん」とは、9年前、出版社に内定した学生が集まる懇親会で出会った。派手な髪色や服装ではなかったし、交わした言葉はほんの二、三言だけ。それでも明るくて不思議なエネルギーにあふれるかつりかちゃんは、100人近い参加者のなかで強烈に印象に残っていた。

 そこから数年がたち、久しぶりに開いたフェイスブックでこんな告知を見かけた。

〈葛です。昨年の春に撮影した映画が今年の2月〜4月にアップリンクなどで上映していただけることになりました〉

 確か漫画編集者として働いていたはずで、映画業界に転職したのかと驚いた。だが、どうも出版社を辞めたわけではなく、編集者をしながら映画を撮っているらしかった。聞けば大学時代に映画を撮り始め、「東京学生映画祭」に選出されたこともあるという。

 昨年には、宮沢氷魚さん演じる発達障害を持つ画家と女性編集者の淡い恋模様を描いた映画「はざまに生きる、春」の脚本と監督を務め、商業映画デビュー。その後もショートドラマなどさまざまな作品を手がけている。

 監督として活躍するかつりかちゃんだが、創作の原点は映画ではなく演劇だった。高校時代に演劇を始め、大学入学後にサークルで担当したのは演劇の脚本作り。映画はほとんど見てこなかったという。

 転機は、脚本を務めた演劇の告知をしたときに、友人から言われた一言だった。

「里華の演劇は見たいけど、動けないから行けない」

 高校生の頃に趣味で知り合った年上の友人は、生きることに疲れて自殺未遂。一命はとりとめたものの、下半身不随になり、自由に動けなくなったという。そう聞いたとき、ふとこう思った。

「私は演劇が好きだけど、会場に来ないと見ることができない。もっと気軽に見られる媒体で人を元気にしたい」

 そこから、映画を作り始めた。日常演劇を作っていたこともあり、「映画のほうが合うんじゃない」と先輩に言われたことも後押しになった。

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福井しほ

福井しほ

大阪生まれ、大阪育ち。

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