和党全国大会の最終日、指名受諾演説を終えて、会場の支持者らを見つめるトランプ前米大統領=2024年7月18日、米ウィスコンシン州ミルウォーキー
トランプ氏のかばん持ちを務めたJohn McEntee氏。常に行動を共にしていた

トランプは「協調性があり、公平に仕事をする」

 マッケンティー氏:それはpublic persona(公人としての人格)としてのトランプです。私が見たトランプは、誰とでも気軽に話し、協調性があり、差別的な言葉も使わないし、誰とでも公平に仕事をしていました。自分と意見が異なる人とも自ら進んで関わっていました。work ethic(「労働倫理」、特に労働は価値あるもので、 働けば働くほどよいとする考え)もしっかりしていました。

――米大統領選に向けた共和党の全国大会は、7月18日にウィスコンシン州ミルウォーキーで最終日を迎え、トランプは同党の大統領候補指名を受諾する演説を行った。

 前半はかなり抑制されたトーンで7月13日の銃撃事件を振り返り、国民の結束を呼びかけたが、後半になるといわゆる<トランプ節>が復活した。

 マッケンティー氏に言わせれば、「前半がトランプの私的な人格で、後半が公的な人格」ということになる。

トランプの「過激さ」は戦略

「トランプ節」――罵詈雑言を交えたトランプの「過激さ」は2015年、大統領選に出馬する直前に、公的人格として、戦略として意図的に採用されたものだ。

 当時のトランプのアドバイザーの一人で弁護士でもあるサム・ナンバーグ氏は、「16人も立候補者がいれば、まるで議員選挙みたいになる」とトランプに言ったという。ナンバーグ氏はこうも言っている。「トランプは候補者の集団から抜け出すべく、挑発的な、言語道断とも言える方法に出るという意図的な決断をした」

 トランプ自身、ニューヨーク誌に「もし私が大統領らしい振る舞いをしていたら、他の候補と何ら差別化はできず、とっくに消えていただろう」という趣旨のことを語っている。

 普通はその逆だ。つまり私的な会話で罵詈雑言を吐いていたとしても、公的な場ででは洗練された言葉を使う。だが、トランプが罵詈雑言を吐くと、いかにも「トランプらしく」聞こえる。それが彼の人格である、と認識している人も多いだろう。

「暴言戦略」の広告効果は20憶ドル

 だが、暴言こそが、トランプの戦略だった。暴言を吐くとメディアが注目することを、トランプは熟知していた。トランプは自分のリアリティ番組「アプレンティス」で、“You’re Fired!”と怒鳴った方が面白いことをわかっていた。

 ニューヨーク・タイムズ紙によれば、1期目の選挙戦でトランプが集めたメディアの注目を広告費として換算すると、2016年8月の時点で20億ドル近くにもなるという。

 対照的なのが、バイデンが大統領選からの撤退を決断し、バトンを渡した、副大統領のハリスだ。

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