免疫機能にも作用するビタミンD
ビタミンDが不足すると低カルシウム血症や骨軟化症、うつ病などを引き起こす恐れもある。越智教授によると、「諸説あるが、妊娠中のビタミンD不足が子どもの自閉症に影響する可能性もある」という。
よく知られるビタミンCをはじめ、ほとんどのビタミンは体内で生成することはできない。だが、ビタミンDは体内で生成することができる。その意味でビタミンDは特殊であり、「栄養素」としてだけではなく「ホルモン」とも位置づけられる。ステロイドホルモンに近い作用を持ち、膠原病などの自己免疫疾患を抑える働きもある。
2023年の東京慈恵会医科大学の発表によると、約10万人のがん患者のデータをメタ解析した結果、術後のビタミンDサプリメント摂取により、2年後以降のがんの再発死亡リスクが12%減少したことも明らかになった。
いかにビタミンDが重要であるかがわかるだろう。
現代人の98%がビタミンD不足
産業革命期のヨーロッパと異なり、同時代の日本では、くる病を引き起こすほどのビタミンD不足はあまり見られなかった。建物が比較的日光を通しやすい構造で、ビタミンDが多く含まれる干しシイタケや海産物をよく食べる食文化が影響していたと考えられる。
だが、現代日本人には衝撃の調査データがある。2023年の東京慈恵会医科大学の発表によると、東京都内で健康診断を受けた5518人を対象にした調査で98%がビタミンD不足であることがわかっている。調査に関わった越智教授はこう語る。
「その調査の対象は都心でした。ですが、湘南健診センター(神奈川県)の検体も同様に測ってみたところ、あれだけ日当たりの良いエリアでも9割近くの人がビタミンD不足でした」
キノコ類や鮭に豊富
ビタミンDが多く含まれる食品は魚類、キノコ類だ。キノコ類の場合、干しシイタケ、乾燥キクラゲなど、天日干ししたもの以外にはほぼ含まれていない。「脂溶性のビタミンDは体内に蓄積しますので、長期的に見た平均摂取量で考えます。鮭の切り身なら1日平均一切れ(皮ごと)でよいといわれていますが、塩分を取り過ぎる可能性もあるので注意してください」(越智教授)